先日も触れた、在トルコ・サウジアラビア大使館内でサウジの反体制派ジャーナリストが殺害されたというニュースだが……
10月17日、トルコの親エルドアン政権派日刊紙「イエニ・シャファク」は、そのジャーナリストが「生きたまま指などの体を切断され、7分後にクビを切られて死亡した」とのニュースを報じた。
まず心に留めておくべきなのは、トルコの現政権側寄りのメディアがこんなことを報じている、ということだろう。
つまりエルドアン政権のトルコは、サウジアラビアと友好関係にありたいとは思っていないのである。
さて、何でもこんなことを実行したのは、サウジの当局者15人からなる特務チームらしい。
しかしまあ、特務チームだか暗殺チームだか何だか知らないが――
こともあろうに人里離れた廃屋とか厳重な秘密地下基地などではなく、外国にある自国の大使館内でこんなことをしてしまうなんて、バカじゃなかろうかと思ってしまうのは私だけだろうか。
しかも結局、数日も経たないうちにその映像と音声が外部に流出してしまったのだ。
(少なくとも、くだんのトルコ紙はその音声を聞いたと主張している。)
この人ら、ジャーナリスト一人を始末するのに、こんなブザマなことでいいのだろうか。
仮にも一国の(それも潤沢な工作資金を供給できそうな産油国の)特務チームがこのザマでは、サウジアラビアの軍とか警察の程度が知れる……
と感じるのは、はたして感じすぎだろうか。
それはともかく、もし今回の報道が事実で、しかも本当に音声とかが公開されてしまったなら、サウジアラビアとその政権の評判は、落ちるところまで落ちることになる。
ところがどっこい、これが国際政治の複雑さというかバカらしさというもので――
アメリカはおろかイギリスなどの「西側先進国」は、どうしても今のサウジとの関係を悪くしたくないらしい。
その理由は、今のサウジはあまりに地政学的・経済的・商売的に重要すぎるからだという。
もし今回のような疑惑がシリアやミャンマーとかで生じれば、そこの政権は寄ってたかってボロクソ叩かれるのは火を見るよりも明らかなのだが、つくづくサウジアラビアとはこういう点で恵まれている国である。
しかし普通の人間の目線からは、今のサウジアラビアは「ならずもの国家」を超える「ろくでなし国家」としか見えようがないだろう。
そんな国と(すなわちサウド王家と)それでも仲良くしなくちゃいけない、なんて、「先進国」というのも別にたいしたものではない。
こんな国々が世界のどこかの他の事案でいかに人道を問題にしようと、真面目に聞くことはないようにも思える。
とはいえ、もし今回の報道が本当だとすれば、やはりサウド王家の命運も明るいものではないようだ。
私は中国共産党王朝の滅亡は約30~40年後くらいのことだと思っているが、サウド王家の命脈もそれぐらいと見ておけばいいような気がする。
それくらいの年月が経てば、さすがにこれほど欧米の「理念」に反する政権は、生き残ることがないと思う。
これから先、貧困問題も資源問題も人類がクリアしていくとすれば、最後に残る争いの種は「理念」だろうと思うからである。
これから先、CIAなどの主要工作が「サウジの王制打倒・民主化」に向けられたとしても、何の不思議があるだろう。
今はまだ、そんなことはありえないと感じたとしても、どうせ世の中は変わるのである。