プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ウーマン村本氏ら非武装投降論者に聞いてみたい、たった一つの質問

 新年明けましておめでとうございます。

 さて今年最初の記事は、例のお笑いコンビ・ウーマンラッシュアワー村本大輔の発言についてである。

 正月番組の『朝まで生テレビ』の中で、村本氏は


●「もし侵略されたら、白旗を揚げて降参する」

●「なぜ中国や北朝鮮が日本を侵略するのか、意味がわからない」

●「人を殺して国を守るくらいなら、(尖閣諸島を)取られてもいい」

●「沖縄はもともと中国から取ったもの」

●「人を殺すくらいなら、殺される」


 といったことを述べた。

 当然ながら、ボロクソに叩かれている。

 

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 こういうことがあると必ず「炎上商法」という言葉が頭に浮かぶ現代だが、確かに商法としては間違っていない。

 政治学者でも憲法学者でもない素人が「一家言持っている」と評価され台頭するためには、こういう極論を吐かないことには話にならないからである。

(素人が今さら改憲論を述べたって、さほどインパクトはないものだ。)

 どんなにボロカス叩かれても、しかしある程度の割合で、必ずや支持してくれる人が出てくる。

 まずニッチ市場で橋頭堡を確保するのは、むしろ商売の常道と言ってもいいことだ。

 こういうことで名を売っていれば、それこそ国政選挙で当選の目だって出てくるはずである。


 しかしながら村本氏の発言を、純粋にウケ狙いの炎上商法だと断じるのも違うだろう。

 商売っ気があろうとなかろうと――

 自分が全く思っていないこととか、自分の思いとは正反対のことをわざわざ発言するなんて、人間にはあまりやれないことだからである。

 たぶん村本氏は、本当に「非武装中立」「殺すくらいなら殺される」「侵略されたら降伏する」ということを、心から正しいと思っているのだと思う。


 私は別に、彼が間違っているとは言わない。

 決して同意はしないが、同じ意見でないからって「間違い」だと決めつける気にはならない。

 何と言ってもそれは村本氏の信念・信条である。

 村本氏がそう思うのだから、何を言っても仕方ないではないか。

 ただ一つ、子どもの頃からこういう人たちに聞いてみたいことがあった。

(村本氏の言う「非武装中立」「侵略されたら名誉ある降伏を」論は、半世紀前の大昔からあったものである。

 もちろん、子どもの頃から今までにこんな質問をする機会は全然なかったが……)

 彼らにたった一つだけ聞いてみたい質問とは――


●「だったら日本が中国を侵略したとき、中国人はさっさと降伏すべきだったのか?

  朝鮮人も抵抗なんか一切せずに、おとなしく日本統治下で暮らしてれば良かったのか?」


 というものである。

 村本氏らの立場から言えば、その答えは当然「そうです」とならなければならない。

 「少なくとも自分はそう思う」と言わなければならない。

 まさか、「いや、日本が侵略する場合だけは違う」と言いはすまい――

 と言いたいところだが、実際はその「まさか」を言ってしまう光景が、あなたには目に見えないだろうか?

 
 非武装投降論者によれば、ナチスドイツの侵略にも各国は抵抗すべきでなかったということになる。

 ベトナム戦争で、北ベトナムはさっさとアメリカ(と南ベトナム)に降伏すべきだったということになる。

 「少なくとも自分はそう思う」はずである。

 これが「いや、侵略する側が誰かによって違うんだ」というのは、信念の破綻であり御都合主義としか言いようがない。

 もしかして村本氏ら「日本の」非武装投降論者というのは、「侵略されるのが日本であるときだけ」非武装投降論者なのかもしれない――と、子ども心に感じてきたことである。

 
 ちなみに私にも、「なぜ中国や北朝鮮が日本を侵略するのか」を、意味がわかるように説明することは確かにできない。

(これができる人は、あまりいないと思う。)

 しかしそれを言うなら、村本氏には「なぜ日本が中国や朝鮮を侵略しようとしたのか、なぜナチスが近隣諸国を侵略したのか」も意味がわからないのではないだろうか。 

 そしてきっと、なぜイスラム過激派が欧米を目の敵にしてテロをしているのかも「意味がわからない」のだろう。

 もちろん、「意味がわからない」のは仕方ない。それらの意味を解きほぐすのは、確かに学者ら研究者らの仕事である。

 庶民にそんなヒマがないという点では、村本氏の言っていることは正しい。

 しかしながら重要なのは、「意味がわからない」のと「ありえない」のはイコールではない、ということである。

 
 私にも村本氏にも、量子力学はおろか一般物理学さえ「意味がわからない、チンプンカンプンなもの」には違いない。

 しかし個人個人にとって意味がわかろうとわかるまいと、量子力学や一般物理学に沿った物理現象が起きているのは確実なことだ。

 他国をなぜ侵略するのか、その意味がわかろうとわかるまいと、侵略というのはあり得ることなのである。


 私は、かつての中国人が日本軍に抵抗したのは「当たり前のこと」だったと思う。

 朝鮮人にも独立を目指して戦った人が多かったのは、「当たり前のこと」だったと思う。
 
 もちろん今の日本が侵略されたら、侵略軍を殺しまくるのは当然だと思っている。

 そりゃ私だって人を殺したいわけではないが、侵略されたのなら殺すのだって仕方ない。

 むろん相手の兵士には何の恨みもないが、せいぜい残虐行為をしないようには努めたいものである。

 
 最後にもう一つだけ思うのだが――

 村本氏ら非武装投降論者の人たちは、『ガンダム』から『スターウォーズ』といった物語について、どう考えているのだろうか。

 (もし見ているとすれば)どんな思いで見ているのだろうか。

 彼らの立場からすれば、レジスタンスとか連邦軍とかいうのは、さっさと白旗を揚げて降伏すべきもののはずである。

 そうであるなら物語を楽しむどころではないだろう。

 いやそれは現実でなく創作だから話は別だ、というのは説得力がない。

「レイプや痴漢は、現実では決してやってはならない。

 しかし創作なら(興奮するから)OKだ。」

 というのはまだわかるが(男性なら大半の人がわかると思われる)、

「現実世界では侵略されたらすぐ降伏すべきだが、

 創作世界なら抵抗すべきだ/してもいい」

とする感性は、なかなか理解しがたい(それこそ「意味がわからない」)ものだからである。


 もう一度、問うが――

 日本が侵略してきたとき、中国人や朝鮮人はみんな白旗を揚げて降参すべきだったのだろうか?

 少なくとも村本氏はそう思うのだろうか?