プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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安芸高田市・石丸市長、東京都知事選立候補を表明-東京一極集中に反対する東京都知事誕生? (下)

 ところで石丸氏とその都知事選出馬については、むろん悪口や疑念の声もある。

 それらを3つに大別すると、

「これ全て自らのステップアップのための踏み台」論、

安芸高田市と東京都ではあまりに規模が違い過ぎる」論、

「敵を作って対立を煽って自らに支持を集めるタイプ」論、

 とでもなろうか。


 まずステップアップ踏み台論だが、確かに石丸氏の心の中では、

安芸高田市という小規模自治体で守旧派との対立構造を作ってユーチューブをヒットさせ、全国区の知名度を作ってから都知事になろう。都知事になれなくても立候補で名が売れるからいいや、その先は首相になろう」

 なんてプランなり野望があるのかもしれない。

 安芸高田市長の地位は、そのためのファーストステップの踏み台だとでも思っている(思ってきた)のかもしれない。
 
 そんなこと、読心術でも使えなければわかることではない。

 しかし、もしこれが本心だったとして――

 それが悪しき出世志向かと聞かれれば、「別に悪くはないんじゃないの?」と思うのである。

 いずれ本社の幹部になろうと思っている若者が、地方の支店長の座を踏み台として捉えているというのは、そんなに悪いことだろうか。

 悪いと言うより、人の心としてそういう気分になるのは無理からぬ当然のことではあるまいか。

 さらなる知名度づくりのため選挙に出るというのは、私利私欲の人生戦略として指弾すべきものだろうか。

 そんなこと言ったら、一般企業がメディアへ広告を出稿するのも似たようなものだと思うのだが。

 そしてまた「守旧派と対決してユーチューブをヒットさせ」なんてのも、狙ったからと言ってそうそうできることでもないと思うのだが……


 次に、「安芸高田市と東京都では規模が違い過ぎるから、石丸氏の手腕が通用するかは未知数」論である。

 しかし私は思うのだが、だったら誰の手腕が未知数ではないことになるのだろう。

 他の大都市、人口数百万せめて数十万クラスの都市の首長をやった人でなければ東京都知事にはふさわしくないなんてのは、むしろ逆に不自然であり非現実的ではないか。

 そもそも歴代の東京都知事には、そんな経歴の人がいたのだろうか。

 地方の支店長をやってから本社の社長や重役になるというのは、世の中で当たり前のことではないか。

 中小企業の社長をやったから(それで成功したから)といって巨大企業の社長は務まるかどうかは別の話、というのは正論ではあるとしても――

 だったら「今まで社長をやったことがない人に社長が務まるかは未知数」なんて言われたら、誰が社長になればいいのか。

 思うに、いわゆるタレント議員・タレント首長の氾濫に眉をひそめてきたタイプの人にとっては、「地方の小規模市町村の首長を務めてきた人が都知事に立候補する」というのは、福音のようなものである。

 アナウンサーや大学教授が立候補するより、はるかに理想的王道的な「あるべき姿」に思えるのではないか。


 最後に、「敵を作って対立を煽って自らに支持を集めるタイプ」論だが――

 これは確かに、石丸氏はそういうタイプの人格なり政治手法なのかもしれない。 

 しかしまあ、何かをやろうとすれば必ず反対者や対立者が出てくるもので……

 でもどうしてもその何かをやろうとするのが「敵を作り対立を煽る」悪なのだということにされてしまえば、残る道は妥協か断念しかないことになる。

 それが善であり人の道だというのは、やっぱりヘンなのではないか。


 以上、まるで石丸氏のファンであるかのような弁護論めいたことを書いてきてしまったが――
 
 しかし私は、とある政治家のファンである人というのは、ハッキリ言えば気色の悪い人だと思っている。

 支持するというのはわかるが、ファンになるって何なんだと思わずにいられないのである。

 いや、支持するというのも、直接の付き合いがあるわけでもない人間の人格を支持すると言うのではなく、あくまで人ではなく政策なり実績なりを支持するというのがマトモだろうと思うのである。

 
 ともあれ今回の立候補により、石丸氏は確実に次期都知事選の台風の目となった。

(もう一つの台風の目は、例の「つばさの党」の活動だろう。)


 そしてこれは、別に東京に地盤があるわけでもない「ネット有名人」(の一種だと言うことは許されるだろう)が都知事の座をゲットできるかどうかという点でも、非常に興味深い面がある。

 また、もし彼が都知事になれば、具体的にどうやって東京一極集中を解消しようとするのか、もちろん興味深い。

 はたして首都の行く末は、いかに……