3月30日、農林水産省でワープロソフトはワードだけ使うべきとした「一太郎禁止令」が出された、と報じられた。
最近やたら多い「法案の条文ミス」の理由とされ、民間企業とのやり取りで不便が生じていることが理由だという。
(⇒ FNNプライムオンライン 2021年3月30日記事:法案ミスで「一太郎」禁止令? 農水省「ワード原則化」通知)
たぶん多くの人は、「いまだにワードじゃなく一太郎を使っているのか」と感じただろう。
なるほど官公庁ではいまだに一太郎の使用が(一部ではあっても)根強く続けられているとは聞いていたが、それは事実だったらしい。
ところで私の場合、オフィスではワードを使うがプライベートでは一太郎を使う。
大雑把に言うと、「文字の色づけや塗り潰し」ではワードが勝るが、それ以外の日本語変換性能やレイアウト性能では、一太郎が勝ると言ったところだろうか。
(何だかんだ言っても、やはりATOKは変換性能でボロ勝ちである。)
とは言っても、世の中はやっぱりワードだらけである。
民間企業では一太郎なんてインストールしているところは少ないだろうから、ファイルの互換性の点でワードが絶対的優位に立つのは仕方ない。
だが、これって、何だかんだ言ってもマイクロソフトの「抱き合わせ商法」の勝利ではなかろうか。
日本語ワープロソフトとしてはたとえ性能が劣っていても――
手段はどうあれ普及率で勝ちさえすれば、それがスタンダードになる。
それじゃないのを使うことが「問題視」されるようになる。
なんだか優れた日本語ワープロソフトを開発し向上させようとするのは、バカらしく思えるではないか。
しかし、素人なりに思うのだが……
日本人が国産日本語ワープロソフトの一太郎を使うのを問題視し、
外国企業の日本語ワープロソフトをみんな使えと決めるというのは、本当に問題ではないのだろうか。
私は別に国粋主義者ではないが、中国企業が作った日本語ワープロソフトがスタンダードになりそうになったら、やっぱりみんなそれを使えと日本政府が言い出すのだろうか。
そんなことしてたら日本の基幹産業は全て中国に奪われて(負けて)しまうと思うのだが、相手が中国や韓国でなくGAFAだったらそれでいいのだろうか。
(もっとも今のスマホだって、韓国のサムスンが日本のシェアをかなり占めているが……)
そして互換性を言うのなら、日本の「元号」というものだって禁止令を出してもおかしくなさそうではある。
今が2021年だと知っているが、令和3年だということは知らない日本人って、かなりいるはずだ。
そして元号使用こそ、膨大な煩わしさや表記ミス(令和3年と打つべき所を平成3年と打ってしまうような)を齎しているのではないか。
おそらく、元号使用を本当は「メンドクサイ」「不合理」と思っている日本人は、非常に多いはずである。
不合理というのは、「昭和62年から現在まで続く賃貸借契約は、では何年続いていることになるか?」という換算の手間のことである。
そして当然ながら、元号には世界に通じる互換性がない。
公文書でそれを使用することは、日本で暮らす外国人への配慮がないと難癖を付けられても仕方ないことだろう。
日本政府は、それは問題視しないのだろうか。
そしてまた、少なくとも「法案の条文の表記ミス」は、一太郎のせいでは絶対にないはずだ――
(もちろん人間のチェックミスのせいである。
ハッキリ言って、長々とした法案の条文なんて、誰も読まずに「はいはい、ハンコ押すよ」で決裁が通っていくシーンが目に見えるようではないか。)