5月11日、書店大手KADOKAWAは、地域情報誌「東京ウォーカー」「横浜ウォーカー」「九州ウォーカー」を、6月20日発売号をもって休刊すると発表した。
なんでも、「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消費者の行動様式の変化を踏まえた判断」であり、
今後はデジタルシフトの一環として、ニュースサイト「ウォーカープラス」で各エリアの最新情報を発信するという。
残る「東海ウォーカー」と「関西ウォーカー」の刊行は継続するものの、6月発売は見送り、その後にどうなるかは改めて告知すると言っているから、その運命も風前の灯火と言ったところか。
この「●●ウォーカー」という雑誌名は、非常に有名で浸透している。
東京ウォーカーの創刊は1990年(平成2年)、横浜が1998年、九州が1997年なので、まさに平成という時代を代表する雑誌の一つと言っていいと思うが……
それも令和の2年目で、あえなくその歩みを終えることとなった。
ただ、私は思うのだが――
休刊とした原因は「新型コロナによる消費者の行動様式の変化」(要するに外出自粛で、街中をウォークしてはいけなくなった)と言われているが、
実際は(悪く言えば)現下の自粛情勢に「便乗」して休刊することにした、のではないかと感じられる。
つまり、もう●●ウォーカーシリーズを雑誌の形で書店流通網に乗せるのは、ずいぶん前から割に合わなくなってきていたのではなかろうか。
東京・横浜・九州ウォーカーは、昨年12月時点で各2万部以上を発行していたらしい。
これは「年間発行部数」のことだと思うが、ちなみに「週刊プロレス」のそれは年間20万部である。
なんと(と、言っていいと思うが)、東京・横浜・九州ウォーカーを全部合わせても、
とても世間一般に浸透しているとは思えない週刊プロレスの発行部数の、3分の1にも満たなかったのだ。
もっともこれは、よく考えればわからないことではない。
私は今まで、電車の中で●●ウォーカーを読んでいる人を見たことがない。
これに対して絶対に何人も見るのは、「スマホを見ている人」である。
ハッキリ言って今の若い人たち(つまり●●ウォーカーのターゲット層)は、本も雑誌も読むヒマはなく読む気もなく、スマホを見ることに(何とはなしに)精力を傾けている――
これは何年も前から言われてきたことなのだが、
ついに知名度抜群の●●ウォーカーシリーズさえ、その軍門に降ってしまったようだ。
いや、外出先の情報が知りたければ、雑誌を買うよりスマホを見るに「決まっている」のに、よく今までもったものだ、と思うべきなのかもしれない。
●●ウォーカーは、平成時代の(今で言う)「リア充」「外遊びの好きなアクティブな若者」を、象徴するような雑誌であった。
しかし(コロナではなく)スマホの普及が著しく進んだ今、ついにその役割を降りた。
平成が終わってまだ1年しか経っていないのだが――
早くも「平成は遠くなりにけり」という感慨を抱く人は、多いのではないだろうか。