7月31日、忘れた頃にあのフリージャーナリスト・安田純平氏の「助けを求める動画」がインターネット上で公開された。
彼の後ろで自動小銃を構えている黒づくめの二人は、ヌスラ戦線の残党であるフッラース・ディーンなる組織の構成員らしい。
そして安田氏は、なぜか日本語で「私の名前はウマル、韓国人です。とてもひどい環境にいます」と助けを求めている。
ウマルというのは言うまでもなくアラブ系の名前であって、日本人でも韓国人の名前でもない。
これはもしかしたらイスラム教への改宗を強要されたからか、とも思えるのだが、「韓国人です」と日本語で名乗っているのは全くの謎である。
しかし最もストレートな解釈は、安田氏が日本国籍は持っているが実は在日韓国人である、というものだろう。
別に「韓国系日本人」(帰化した在日韓国人)だからって日本国籍である以上「日本国民」には違いないが――
こんなこと言ったら大勢の日本人から “同情する気が失せる” のは、ちょっと日本の状況に詳しい人がいればすぐわかりそうなものだ。
もしかしたらフッラース・ディーンなる組織、ヌスラ戦線の残党だけあって、日本に詳しい人間がいなくなっているのかもしれない。
(元から、そんなにいたとは思えないが……)
あるいは「日本人であり韓国人でもある」ということにしておけば、日本と韓国から身代金の二重取りまたは「どっちかから取れる」とでも思ったのだろうか。
だとすれば、非常に浅はかと言うしかない。
だいたい安田純平氏のことなんて、ほとんどの日本人は気にしていない。
今回のニュースを見ても、「まだやってんの? まだこの人生きてたの?」という感想を抱いた人の方が多いはずだ。
北朝鮮の日本人拉致でさえすっかり下火になった今、
そして次から次へとあらゆるニュース(話題)が湧いて出てくるこの時代、
日本人はいちいちこんなこと気にかけているヒマはないのだ。
むろん身代金を払って救出すべきだと思う人なんて、九牛の一毛といったところだろう。
そして今回テレビ朝日は、地上波テレビ局で唯一「私はウマル、韓国人です」と安田氏が語る映像をカットして放送したらしい。
これも謎と言えば謎で、安田氏の短いコメント中の核心を報じなかったということになる。
やっぱりこれ、ウマルだの韓国人だのと報じれば、安田氏への同情が失せることに「配慮」したのだろうか。
この時代にそんな配慮をすればバカにされることくらい、いくら何でもわからないはずはないと思うが……
しかしテレビ局というのは、報道業界の報道業者である。
商品やコンテンツの何を売り出すかは、もちろん業者の自由である。
バカにされるリスクを承知でこういう売り出し方をしたというなら、もはや何も言うことはない。