プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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別府市、パチンコでの生活保護支給停止を撤回 ~AKB48と生活保護~

 3月16日、大分県別府市中津市が、従来「生活保護受給者がパチンコしたら、支給を一部停止」してきたものを、来年度から止める方針であることがわかった。
 生活保護法では受給者がパチンコすることを明確に禁じているわけではないとして、国と県から是正指導が入ったことによるものである。


 この報道を受けて、別府市社会福祉課には電話などで数十件の意見が寄せられ、その9割程度が「撤回しないでほしい」「県に屈しないで」といった激励の声なのだという。(3月17日 J-CASTニュース記事)

 一般に、行政機関に激励の声が寄せられることなど極めて珍しい。それが数十件ともなると異例である。この問題について国民の関心はかなり高いと言えるだろう。

 

 さて、別府市においては――

●市の生活保護担当者がパチンコ店と市営競輪場を巡回し、生活保護者を見つけたら「やらないように」文書で指導する。

●従わない場合は、医療扶助を除く支給を停止する。

●受給開始時に、パチンコ店などに立ち入らないとの誓約書を提出させる。

 などということを、もう25年も前から続けてきたらしい。実際に平成26年度は6人、27年度は9人が1~2ヶ月の支給停止を喰らったとのこと。
 しかしこのことが世に広く知られたのは、昨年(2015年)12月15日に別府市が市議会で明らかにしてからである。
 それまで25年もの間、別府市生活保護受給者は一人残らず知っていた「常識」であったはずなのに、だ。
 生活保護受給者らの情報発信力がいかに弱いか、市民団体や弁護士らの調査意欲・ネタ発掘力がいかにたいしたものでないかを、如実に感じる思いがする。
 なお、別府市中津市とも、来年度から生活保護費の停止・減額はやらないものの、ギャンブル場の巡回は続け、受給者を発見したらやらないように指導することも続けるという。

 

 この件について私の意見を言うと――

 まず、生活保護者が生活保護費でギャンブルをやるのは勝手だと思う。自由にやってよいと思う。
 よって、そういうことを監視したり、やらないように指導するのも不要である。

 もしギャンブルで全額スッて生活費がなくなるのであれば、それは本人の自業自得だ。
 そうなったら間違いなく役所に来て追加支給を訴えるだろうが、むろんビタ一文支給せずに追い返せばよい。
(言うのは簡単だが、実際にそうするのが難しいのはわかっている。それでも払わず追い返すのだ。)

 純粋にカネの観点で見た場合、生活保護の支給額というのは「月額○○円」と定額で決まっているものである。
 それを払えば役所の仕事は終わりであり、それ以上の義務などない。保護費の使途の監視などやる必要はないし、とてもやってはいられないはずだ。

 

 別府市生活保護担当者も、ギャンブル場を巡回して生活保護者に「やるな」と声をかける仕事などやりたくもないだろう。言うまでもなくそんなことをするには、莫大なコストがかかってもいる。
 しかも世の中の“浪費”の手段はいくらでもあるのだから、パチンコ・競馬だけ浪費の口を塞いだとしても他からの漏れは防げない。
 AKBの大ファンの生活保護者がいるとすれば、AKBのメンバーと握手したいがために保護費で(同じ)CDを何枚も買ってしまうのであろう。
 それはたいがいの人から見てバカバカしい/止めるべき浪費なのだが、しかし彼にとってはそれがなければ生きていけない(と、今は感じている)ことは大いにありそうである。
 そういうのを監視するのは極めて困難であり、止めろと言われて止められるものでもないのだろう。
(たとえ生活保護担当者が家の中に入ってきて生活状況をチェックするとしても、CDは床下に隠しておけばよい。畳みをひっくり返してまでチェックすることはないはずだから。)

 よって本当の問題点は、「じゃあ、そんな浪費をいつまでも続けさせていいのか。いつまでも生活保護者でいさせていいのか」ということになりそうである。