8月6日、福岡市飯塚市の副市長(60歳)が、「一般職員の勤務中=市役所の開庁時間中」の午後4時台から約30分間、市内のパチンコ店で(1円)パチンコを打っていたことがわかった、と報じられた。
(⇒ 福岡TNCニュース 2024年8月6日記事:副市長(60)が職員勤務中にパチンコ 市民に写真撮られ一度は辞意も…市長から厳重注意に 福岡・飯塚市)
なぜこれがわかったかというと、この副市長の知人がパチンコ中の副市長を撮影し、その写真と「辞職すべきだという文書」が突き付けられたからだという。
これを受けて副市長は辞職を申し出たが、市長は辞職まではする必要がないとして厳重注意にとどめたという。
さて、副市長というのが(市長と同じく)一般職員ではなく特別職であり、従って一般職員のように「定められた勤務時間」というものが実はないことは、わりかし有名なことである。
が、確かにこれを知らない一般人は多いはずで、たぶん過半数の人は「当然」副市長の勤務時間は一般職員と同じに決まっている、と思っているのではなかろうか。
しかしいくらそうであろうと間違いは間違いで、副市長に定まった勤務時間というものはない。
極端な話、全く市役所に出てこなくても違法ではないのだろう。
とはいえ実際はそれでは仕事にならない――本人もだが、何よりも部下たちが――ので、全国の副市長というのはだいたいは一般職員と同じ時間帯で勤務していると思われる。
そして今回の飯塚市副市長だが、この報道を見る限りでは、告発された「パチンコに興じた」時間というのは、何とも(いや、非常に)カワイイものと感じられる。
なんたってたった30分、しかも時間帯は午後4時台からである。
一般職員の勤務時間は午後5時15分までとのことなので、「あともう少し」での早退ではないか。
そして、くどいようだが、副市長に定まった勤務時間というものはないのだ。
そうなると気になるのは、なぜ知人に「告発された」副市長が一度は辞職を申し出たか、である。
また気になるのは、市長が厳重注意したというが、そしてまた副市長の減給も検討されているというが、それはどういう理由でなされるのだろうか、ということである。
それはいわゆる「世間を騒がせた罪」あるいは「告発されたこと自体が罪」なのだろうか。
私にはこれ、実に恐ろしいことだと思うのだが、あなたはどう思うだろう。
一般職員が勤務中に他の職員が休みを取る、なんてことは、ごくごく当たり前のことである。
有給休暇を取るのもそうだし、タイムシフト勤務もある。もちろん休日勤務の振替休日だってある。
それで「開庁時間中に」パチンコに行くのが「法的にはともかく道義的には問題がある、責任がある」なんていうのは、話にならない暴論ではないか。
上記引用記事中には飯塚市民の声として「パチンコは休みの日に行けばいいと思う」とかあるが、これも話にならない暴論である。
この市民氏は、職場で1時間の休みを取って早退し、帰りにどこか遊びや買い物に行ったことがないのだろうか。
もしそれが「道義的には問題がある」なんて考えているとしたら、完全に頭のビョーキではないか。
いやホント、いったい何を根拠に厳重注意を受けるのか、ぜひともその厳重注意の内容を公表してもらいたいものである。
これはきっと、あなたも興味があるはずである。
それにしても、ちゃんと休みを取って――そもそも「休みを取る手続」すら必要ないのだが――いるかもしれない副市長のパチンコ姿を撮影し、辞職すべきだと手紙を添えて告発しに来る知人というのも、何か異様な雰囲気である。
まあ、よっぽどこの副市長が嫌いであるか、因縁があるのだろうとは推測できるが……
しかし、こんな告発を受けて一応は副市長は処分を受けるのだから、告発した甲斐はあったことになる。
さて、ジョージ・オーウェルのかの有名な小説『1984年』で国民を監視・支配するのは、偉大なる「ビッグ・ブラザー」であった。
ところがこの21世紀の日本でのビッグ・ブラザーとは、国家でも国家の手先のエージェントでもなく、ただのそこらの庶民なのだ。
これはさすがのジョージ・オーウェルと言えども、全く予想できなかったのではないか。
日本人のあなたを監視するのは、国家ではない。
あなたを告発・密告するのは、国家ではない。
あなたにクレームを付けてくるのは、国家ではない。
あなたを嫌って敵対するのは、国家ではない。
そういうことをするのは全て、あなたと同じ庶民である。
つまり、あなたを抑圧し害しようとする敵は、悪の監視国家ではなくただの庶民たちである。
こういう面からも、「悪なる国家が人民を抑圧する」という世界設定がいかに時代遅れの現実遊離なものであるかを、あなたも実感しているのではなかろうか……