プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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広島中3自殺事件雑感 その2 時系列の記録整理

 引き続き、広島中3自殺事件の時系列を整理する。

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1.2013年10月6日(日)

 発端になった「万引き」が発生。(自殺生徒が関わったのではない。)
 当時1年生の男子生徒2人が万引きしたとコンビニから学校へ通報があり、たまたま部活指導で学校にいた教師Bがそれを受けた。
 教師Bは当該生徒2人の保護者及び他の教師と一緒にコンビニへ行き、その場で謝って事を収めた。(コンビニは警察に言わないことになった。)
 なおこの2人の他にももう一人の生徒が別の場所におり、その生徒にも話をして帰宅させている。
 教師Bは、教師E(生徒指導主事)にこのことを報告し、関わった生徒の名字を伝えた。
 そして教師Eは、生徒指導推進委員会資料へのデータ入力を行なう際、誤って自殺生徒の名を入力してしまうのである


2.2013年10月7日(月)

  1年生による、対教師暴力行為事案が発生する。


3.2013年10月8日(火)

  生徒指導推進委員会が開かれる。使用資料において、万引き生徒の名前が間違っているのを参加教師が指摘。
  各自の手持ち資料では修正された。(紙の資料を手書きでそれぞれ直した、という意味だろう。)
  しかし、(パソコンの)元データ自体は修正されなかった。
  なお、当然ながら、この日の議題で優先されたのは万引き事案ではなく前日の対教師暴力事案であった。


4.2015年の春

 3年生の担当教諭らが、高校への推薦基準を変更する検討を始める。
 従来は1・2年生の時に触法行為があっても推薦していたが、1・3年時に触法行為があれば推薦しないとしたもの。
 賛否は拮抗するが、自殺生徒の担任教師は当初、3年生だけを対象とする従来の基準を支持。


5.2015年11月

 高校への推薦基準変更は難航の末、学年主任が校長に報告し、基準変更が決定。(しかし保護者には通知せず)
 校長から触法行為があるとされた19人の生徒の担任に、「いつ、どこで、何をしたか」を生徒本人に確認するよう指示がある。 


6.2015年11月16日(月) 面談1回目

 担任教師は自殺生徒への進路指導を5回行うが、その1回目。
(この指導は、いずれも教室前の廊下で行われ、所要時間はそれぞれ5分~15分程度だったとのこと。)
○自殺生徒の第1志望は公立高、第2志望は受験に際し校長推薦が必要な私立高。
○担任教師は、自殺生徒が万引きをしたとする誤ったままの記録を基に指導。
 万引きの記録があるので、校長推薦はできないと繰り返し説明。
○おそらくこの最初の1回目、次のようなやりとりがあった。
 担任教師「万引きがありますね」
 自殺生徒「えっ」
 担任教師「3年の時ではなく、1年の時だよ」
 自殺生徒「(間を置いて)あっ、はい」。「万引きのことは、家の人に言わないで」。
 ⇒ 担任教師は、自殺生徒が万引きを否定しなかったと認識した。
○日時は不明だが、担任教師は校長に「触法行為を本人確認できた」と報告する。(しかし、具体的な日時などの確認ができていなかったのは、対象生徒19人のうち彼だけだった。)


7.2015年11月26日(木) 面談2回目
 担任教師は自殺生徒へ、「推薦は難しい」と伝える。


8.2015年12月4日(金) 面談3回目
 担任教師は自殺生徒へ、「推薦はできない」と両親に言うよう伝える。


9.2015年12月7日(月) 面談4回目
 担任教師は自殺生徒へ、再度「推薦はできない」と両親に言うよう伝える。 
○日時は不明だが、自殺生徒は両親に「どうせ(何を?)言っても先生は聞いてくれない」と言っていた。


10.2015年12月8日(火) 三者面談日
 (1)午前中? 最後の5回目の進路指導。担任教師は「万引きのことを親に説明する」と自殺生徒に伝える。
 (2)時刻不明 自殺生徒は三者面談に姿を見せず、担任教師と保護者だけが面談。保護者は万引きのことを伝えられる。
 (3)午後5時頃 帰宅した保護者が、生徒の自殺死体を発見。遺書らしい文書もあった。


11.2015年12月9日(水)
 府中緑ヶ丘中学校、全校集会で自殺生徒の死を「急死」と発表。


12.2015年12月中
 町教委の指導で、推薦基準の対象期間を元に戻す。

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 「4.」[5.」で推薦基準を厳しくしたのは、むろん府中緑ヶ丘中学校の質があまりに悪かったための処置である。

 実際、推薦した生徒が高校で問題を起こし、府中緑ヶ丘中学校の推薦枠が取り消されるなどという話もあったようだ。
(本当に取り消されたのかどうか、私は知らない。)

 しかし、この変更が完全に徒(あだ)となった。

 中3担任教師は過去2年間の生徒履歴も確認しなくてはならなくなり、それが誤った過去の記録を参照することに繋がったのである。


 さて、触法生徒19人のリストアップには、「生徒指導推進委員会の会議資料」が使われた。

 同会議資料の2013年版には、自殺生徒の名が万引きした生徒として誤って記録されたままになっていた。

 ただこの会議の実際の場では、「それは間違い」と指摘があり、府中緑ヶ丘中学校が町教委に提出した「報告書」では正しい名前に訂正されていたのだった。

 しかしながら、「会議資料」の元データが訂正されることはなかった。

 誰が修正を行うか不明確で、管理職からの指示もなかったためだという。

 それが2015年になり、19人のリストアップを行なった学年主任は、「会議資料」のデータの方を参照した。

 「報告書」のデータは正しい名前で残っていたのだが、それは「会議資料」とは別のフォルダに保管されており、学年主任はそれに気付くことがなかったのである。

 そして2015年11月、進路査定会議の資料を準備した担任教師は、やはり「会議資料」のデータを参照した。

 そのデータはもちろん生徒指導推進委員会で使われたのだから「正確なはずだ」と信じ、自殺生徒への進路指導を行なったのである。

(続く)