現役の山梨市長が、市職員の不正採用で逮捕された事件について――
先日の記事の【蛇足】で、「自宅捜索して証拠が出てきたって、いったいどんな証拠なのか」と疑問を呈した。
何とその証拠とは「複数の依頼者の名前と金額が記されたリスト」という、何ともそのまんまのものだったようである。
おそらくこれは、紙にして自宅のどこかに置いておいたのだろう。
「パソコンにデータとして保管しておき、隠した気になっていた」というならまだわかるのだが、こんなものをそんなナマの形で保管しておくなんて、手の付けようのないバカである。
いったい70歳チンピラの知能程度とは、この程度のものなのだろうか。
チンピラの上にバカと来ては、もう付ける薬もないというものだ。
この山梨市長、2014年2月2日(2013年度)の選挙で市長に初当選を果たした(わずか389票差で勝利)のだが、次の2014年度にはもう「二次試験(面接)への市長の立ち会いの復活」を行なっている。
これはもう間違いなく、このときから市職員採用における「収賄水増し合格」制度が始まっていたのだろう。
報道によると、今年度に不正採用された男性合格者の親の口座などから、数百万円に上る出金が確認されたという。
(金持ちである。そして、たかが田舎の市役所の職員に採用されるのにそんな大金を払う人間がいる――しかも複数いるということに悲哀を覚える。)
もちろん今年度の合格者だけでなく、2014年度からの採用者は全て疑いの目で見なければならなくなった。
2015年(平成27年)4月から2017年(平成29年)4月にかけて採用された山梨市役所職員は、全てワイロを贈って採用された可能性がある。
すでに警察はそれが誰かを知っているし、そもそも採用担当の市職員は初めからそれが誰かを知っている……
いやはや、まさに「小さな街の一大疑獄」である。
本当に実力で採用された人にとっては、まったくたまったものではない。
ところでM市長、こんな不正採用を(就任してさっそく)やり始めた一因は、「借金だるま」と言われるほどカネに困っていたことにあるようだ。
(山梨市の差し押さえは2008年7月、東京国税局の差し押さえは2017年(!)1月)
いや、だが、ちょっと待て――えっ、これっておかしいんじゃないの?
「山梨市の税金を滞納して差し押さえられた」? 山梨市長になった人が?
「国税局に差し押さえられた」? 現役の山梨市長なのに?
なんでだ、なんで税金を払ってない人が立候補できたり市長であることができるんだ?
……そう感じた人は、健全な感性の持ち主である。
これは報道されていないので推測だが、おそらくM市長は山梨市長になる前もなった後も(今現在も)、山梨市税や国税を滞納し続けているのだろう。
普通の市井の人々の半分くらいは、「またバカな問題出して」と思いながらバツを選ぶのではないだろうか?
その人たちにとっては、まさか正解がマルだなどということは想像も納得もできないだろう。
税金を滞納しているのに首長や議員になれるなどというのは、思いもよらない(そんな発想がない)ことに違いない。
しかしこれは、(驚くべき)事実である。
税金を払っているかいないかというのは、立候補の要件でも就任する条件でもないのである。
これはもちろん、百人中百人が「それはおかしい」と感じることだろう。
どうして山梨市税の滞納者が山梨市長になれるのか、どう考えてもおかしいだろう。
だが、不思議なことに――
このことを知っている人もまた多いと思われるのに、今まで「これはおかしい。公職選挙法を改正すべきだ」との運動が行なわれたとは、寡聞にして聞いたことがない。
このおかしさを解消するのは、実に容易だ。
それはただ立候補届けをする際に、国税・県税・居住する市町村の税の納税証明書(完納証明書)を添付させればよいことである。
そんな条件を課したって、候補者にとって大した手間ではないはずである。
それなのに誰も、国会議員も有識者も、誰一人そんなことを広く提案していないように見える。
私にはこれ、今から政治家になろうとする人/今すでに政治家だが何かまっとうに注目を集めたいと考えている新進政治家にとっては、ぜひ主張すべきテーマ・提案だと思えてならない。
まさかこの提案に、表立って反対する人はいないだろう。(もちろん、現役の全ての議員・首長も含めてである。)
そしてまず間違いなく、国民ほぼ全員の同意をカンタンに得られる提案でもあるだろう。
どうでしょう政治家の皆さん、市民オンブズマンの皆さん――
「立候補届には必ず納税証明を添付させる」という法改正を求め、提案・運動してみては?
これって実にカンタンに、圧倒的な支持を得られると思うのですが……