9月17日、中東のレバノン各地で数千台のポケベルが一斉に爆発した。
現時点でこれによる死者は12人、負傷者は2800人に上る。
そしてこれは、イスラム教シーア派組織ヒズボラのメンバーを狙ったイスラエル国軍&イスラエル諜報機関モサドの共同作戦によるものであり、ポケベルに仕込んだ爆発物(プラスチック粘土爆弾?)を電波指令で一斉爆破したのだという。(ただし、イスラエル自体はコメントしていない。)
(⇒ CNN 2024年9月18日記事:レバノン同時爆発にイスラエル関与、通信機器に爆発物仕込む)
まずポケベルについてだが、これは日本では完全に過去の機器であり、現物を見たことのない人の方が多いくらいだろう。
そもそも、(私は調べていないが)日本では製造もされていないだろう。
しかしヒズボラでは、スマホを使えばイスラエルに位置探知されて攻撃を受けることが頻発したため、メンバーに配布する通信機器を近年ポケベルに切り替えたらしい。
そして世界には、ポケベルを大量生産する会社というのがまだあるのだ。(私はこれを初めて知った。)
もちろんポケベルは外国から――台湾製だが実際はハンガリーで生産?――輸入するのだが、その出荷段階で(つまりレバノン国外で)何らかの手段を使って機器内部に爆発物を仕込んだらしい。
いやはや、モサドと言えば昔から「世界最強の諜報機関」との呼び声が高い。
その「諜報」の中には、このような秘密工作・破壊工作の意味も含まれている。
それにしても今回のポケベル一斉大爆破はあまりにもスケールが大きく、自衛隊はおろか米軍やCIAさえもこんなことはできないだろう。
いったいどうやったら、数千台のポケベルの内部に爆弾を仕掛けるなんて芸当ができるのか――
これには世界中の諜報工作機関は目の色を変えて脱帽し、とてもイスラエル・モサドにはかなわないと実感したのではなかろうか。
しかし反面、これは言ってみれば「官製大規模テロ」である。
いくらなんでも爆発させるとき、ターゲット(つまりポケベルの持ち主)の周りには誰もいないとか被害を及ぼす可能性がないとか、いちいちそんなこと確かめての上で電波を送ったのであるはずがない。
そうなるとこれ、普通に考えれば国際的にとんでもないことである。
それともイスラエルには、「ポケベルを持ったレバノンのヒズボラなんて、無関係の外国人と接触していることはない。外国に出かけてることはない」とかのおおよその確信があったのだろうか。
いや、やはりそこは「関係ない人間が巻き添えになっても仕方ない。それは少数だろうから、作戦を実行する方が価値がある」と考えたのだろう。
だとすればこれは、技術的なことはさておくとして――
日本はもちろん、世界のほぼ全ての国が「心理的に、度胸の面で」こんなことは決してやれないと言っていいだろう。
もしかしたらイスラエルは、こんなことがやれる世界で唯一の国かもしれない。
世界破壊工作史的には空前の大事業・大成功と言える今回の作戦だが、しかし、では、これがイスラエルにとって本当に吉と出るかどうか……
これは、かなり歴史的な事件だと思うのである。