11月24日、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、自分の息子が(父たる自分からの)たび重なる警告にもかかわらず暗号資産(仮想通貨)への投資を止めず、その投資額のほぼ全額を失ったことを明かした。
なんでもラガルド総裁自身は「仮想通貨なんて投機的で価値がなく、犯罪者が違法行為に用いる道具だ」と非難し続けてきたそうだが――
親の心子知らずと言うべきか、「息子は私を徹底的に無視した」とのこと。
なお総裁には「30代半ば」の息子が2人いるが、そのどちらかまでは明かさなかったようだ。
(⇒ ロイター 2023年11月25日記事:ラガルド氏の息子、暗号資産への投資額「ほぼ全額」を失う)
この話に、ほのぼのしたところは全くない。
どちらかと言うと複数の意味で深刻で、救いのない話である。
にもかかわらず何となく、ほのぼのした感じを抱いてしまうのは私だけだろうか。
欧州中央銀行総裁と言えば(よくは知らないが)、世界の中でも大物だと日本人の一般庶民でさえ思う。
いや、王族のごとく手の届かない「雲上人」みたいな印象さえある。
しかしそんな人であっても、家庭の内情はかくの如し。
まるで一般庶民の家庭でいくらでもありそうな話が、やはり雲上人の家庭でも起こっているのだ。
しかも一般の家庭では――日本の上流家庭でも政治家の家庭でも――こんな話はどちらかというと必死に隠蔽しようとするはずだが、それを世間に向けて公表である。
さすが欧州、情報公開が進んでいる、オープンだ……
と思うのと同時に、やっぱりそこはかとないほのぼの感が伝わってくるのをどうしようもない。
繰り返しになるが、欧州中央銀行総裁ともなれば政治スリラードラマなんかで「世界的陰謀の中心」と設定されてもおかしくないような役どころである。
しかしそんな役職であっても、家庭の中はありふれた一般家庭とそんなに変わりはしない……
要するに「世界人類、地位は違えど結局みんなただの人」だということを、改めてほのぼのと感じさせてくれたニュースだと思うのである。