7月10日、主に低所得者から“神”とも称されているという外食チェーン・サイゼリヤは、テイクアウト販売の品目縮小と粉チーズ(グランモラビア)の無料提供を終了することを発表した。
従来の低価格路線を維持するための方策の一環ということだろうか。
(⇒ オリコンニュース 2023年7月10日記事:サイゼリヤ、粉チーズ無料提供を終了へ “低価格の維持”誓う「よりお値打ちを感じて頂ける商品を」)
昨今では、この低価格路線の維持ということ自体が「そんなことしてるから日本の賃金は増えないんだ」という風に、必ずしも称賛されることとはなっていない。
しかしやはり、似たような商品・外食メニューであれば、少しでも価格が安い方を人はチョイスするものだ。
ちょっとでも安い品を求めて複数のスーパーを選び歩く主婦――とかいうのは、今でも「庶民の生活努力」の美談的な扱いをされている。
高価格路線あれば、低価格路線あり。
サイゼリヤはその低価格路線でやっていくことを決めているのであり、それはそれで普通のことだろう。
それより(色んな意味で…笑)重要なのは、粉チーズの無料提供終了の方である。
これはサイゼリヤの話でなくラーメン店の話だが、私がそんな某ラーメン店で外食したときのこと。
そこでは各種の「具」や、小さな鶏のモモ肉が無料提供されていたのだが――
そこでまぁ、呆れるほど大量のモモ肉を大量に、それも何度も取って、バクバク食べまくっている男性を見たことがある。
お察しのとおりその容貌は、人品卑しからぬ――というのとは程遠いものであった。
いわゆるチー牛タイプを少し瘦せさせたもの、とでも言うべきだろうか。
私は実はサイゼリヤには行ったことがないのだが、今までは「無料提供の粉チーズを異常に大量に振りかける人、振りかけずにはいられない人」がさぞ大勢いただろうと思う。
これはもちろん、確たるデータに基づくものではないのだが……
トッピングの無料提供というのは、大きく見ればその店舗に「質の低い客を寄せ集めてしまう」ことになっていると思う。
質(レベル)の低い客とは、払ってくれる金額の割に、手間や経費をかけさせる客のことである。
大量に取っていくくせに大量に食べ残して後始末の手間をかけさせるとか、
店舗に卑しい雰囲気をもたらすとか、
あるいは店員スタッフに心理的害悪を与える(クレームとか、態度が悪いとか)確率が高いなど――
世の中で「低価格路線」に勝るのは、「ブランドを確立して高価格・高利潤を維持する路線」だと言われている。
「客単価を上げる」ことを目指すべきだと言われている。
そしてこれに平行して重要なのは、「客質を上げる」ことではあるまいか。
そもそも客質が悪いと定評のある店には、従業員自体が集まらないものである。
低価格かつ何らかの無料提供がある店には、自動的に客質が悪くなる「仕掛け」がしてあると言っても過言ではないだろう。
この人手不足の時代、そんな仕掛けのしてある店で働きたがる人間は、目立って給与が高くなければほとんどいないはずである。
企業戦略として低価格を維持しつつも、しかし少しでも質の低い客を排除する。寄せ付けない。客質の向上を目指す。
その最初の一手が「無料提供の廃止」だというのは、実に理に叶ったことだと思うのだ。