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加計学園は「首相案件」-ウソは政治家と官僚のたしなみ/やらせたいことがあるなら文書で命じよ

 朝日新聞週刊朝日がスクープした「愛媛県職員が作成した文書」によると、愛媛県今治市への加計学園獣医学部)誘致につき――

 2015年4月に行われた首相官邸での「政府関係者」と愛媛県職員・今治市職員の面談における「政府関係者」とは、

 当時の首相秘書官・柳瀬唯夫 氏だったことが判明したそうだ。

 その愛媛県職員が作成した「備忘録」には、柳瀬氏が「本件は首相案件」と発言したことが書かれていたらしい。

 そういう備忘録があった(しかし現物そのものは確認できていない)ことを、愛媛県中村時広知事も認めた。

 しかし柳瀬氏自身は、この報道の後にも先にも「記憶にありません」と否定している。

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 ところでこの「備忘録」、当の愛媛県職員自身かその同僚からでなければ、漏れる可能性がほとんどないものである。

 ということは首相官邸に行った職員自身、少なくとも愛媛県庁職員の誰かが、報道機関にリークしたとしか思われない。

 「そんな計画に乗り気でないのにたまたま担当者にされた」というのは、世の中で星の数ほどある話である。

 たぶんその愛媛県職員の誰かも「こんな計画」に反対であるか反感を持っているか、あるいは安倍政権や自民党を快く思っていない人なのだろう。

 そして地元の今治市役所においても、この件が首相案件だというのは公然の秘密というか常識化しているはずだ。

(こんな話が職員の中で広まらないわけがないだろう。)


 なお安倍首相自身は、加計学園獣医学部新設の話を初めて知ったのは2017年1月20日だったと国会で答弁している。

 しかしこの備忘録が本当のことを書いているのなら、もちろんウソ答弁でシラを切ったということになる。

 少なくとも(今回はこの言葉をよく使うが)、加計学園獣医学部について部下(官僚)に「何かを口走った」ことは確かである。


 もちろん我々は、森友学園問題についてトンデモないウソを数々聞いてきた。

 国税庁長官の日程表は翌日には廃棄しているとか、

 土地売買契約が完結したらそれまでの記録は廃棄することになっている、

 とかをである。

 

tairanaritoshi-2.hatenablog.com

 

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 柳瀬唯夫 氏は、愛媛県職員&今治市職員と首相官邸で会ったのだろう。

 「この件は首相案件です」と言ったのだろう。

 それはきっと、愛媛県職員と今治市職員の出張報告書に書いてあるのだろう。彼らはとっくにそんなこと知ってたのだろう。

 そして安倍首相はおそらく、加計学園獣医学部新設について、何かを口走ったのだろう。


 ただし、安倍首相が「加計学園の話はどんどん進めようじゃないか」と言ったからとて、それだけで疑獄案件になるとは言えない。

 それはまあ首相が先導して地方創生を進めようというのだから、個別具体的な案件について首相が「どんどん進めよう」とか言うというのは、必然というか自然なことである。

 会社の社長がトップダウンで改革を進めようというとき、個別具体的な事案に社長が口を出さない/出してはならない――

 というのは、ほとんどあり得ないことではなかろうか。


 僭越ながら安倍首相の失敗は、その個別具体的案件というのが、自身と親しい「お友達」の案件だったということである。

 むろんこれとて、親しい人の案件に口添えしたくなる/してしまうというのは、これまた自然な話と言える。

(そりゃ、知りもしない人の案件について、首相が口を出す動機なんてないだろう。)


 しかしながら世間は、その自然な話というのを許さないものだ。

 だから本人も隠そうとして、ウソにウソを重ね続けざるを得ないという “ウソ地獄” に陥ってしまう。

 
 そしてもし本当に安倍首相に「自分はこんなことに口利きした憶えはない」というなら――

 やはり問題は、トップの口走ったことを「そのままフォローして(忖度して)走り出すのが人の道」というような、日本人に広く染み渡る封建道徳心にあるのだろう。

 この民主主義の世の中でも、殿様・将軍様の「お言葉」や「ご意向」を奉戴しなければ人間じゃない、なんて考えは、いまだに日本人の道徳心となっている。

 30年くらい前ならこれもまた「日本の強み」とか言われたのだろうが――

 別にそんなのはたいした強みでもなかったのは、世界経済における日本の凋落で、もう明らかに思われる。


 最後に一つ。

 トップの意を受けて何かしようとするなら、それは「ほのめかし」とか「口頭」ではなく、

 何が何でも「文書」によって命令を受けるべきである。

 そういう文書を作成するのが、秘書官だの秘書課だのの仕事のはずである。

 しかし、トップに対して「文書で命令を出してください」と言える会社(その他の組織)というのは、日本では圧倒的に少ないのだろう。

(たぶん、あなたの職場もそうである。)

 よって日本の夜明けは、まだまだ相当遠そうに思える……