先日の記事で大間違いを書いてしまった。
「将棋」と書くところ「囲碁」と打ち込んでしまったのだが、何でこんな間違いをしたのかわからない。
書き直しましたので、載せておきます。どうもすみませんでした。
先日記事のマスコミによる「贔屓の引き倒し」はともかくとして、彼が将棋の天才であることは間違いないようだ。
ただ別にケチを付けるわけではないが――そしてこれは、どうにもいわく言いがたい印象なのだが――、
言い換えると、確かに人間のやることの中で最も早くAIに追い抜かされそうなジャンルに感じる。
おそらくAIにとっては、従業員300人くらいの会社の社内政治を勝ち抜くことの方が、はるかに難しい課題なのだろう。
瞠目すべきは、その通算成績である。
●対局数2,505(歴代最多)
●1,324勝(歴代2位)
●1,180敗(歴代最多)
●1持将棋
なんと14歳7ヶ月で史上初の中学生棋士となり、63年間も現役で活動し、「神武以来の天才」と称された男は、史上最も負けた男であった。
いやもう、将棋のことも加藤一二三氏のことも何一つ知らなくても、この「歴代最多の敗北数」という記録を見ただけでこの人を好きになってしまいそうである。
「史上最高レベルの将棋の天才は、最も負けを重ねた男であった」――この事実にある種の感動・感慨を覚えない人は、ほとんどいないのではなかろうか。
それにしても「神武以来の天才」とか「負けたら即引退」とか、何とも極めてプロレスを思わせる話である。
そして現役最高齢の天才が敗れて引退した翌日、彼の史上最年少デビュー記録を塗り替えた14歳の天才が、旭日昇天の勢いで歴代最多連勝記録に並ぶ――
これほどはっきりした世代交代は、プロレス界にもほとんど類例がない。
(「負けたら即引退」の故・橋本真也にしても、ほどなく復帰した。)
加藤九段は最後の対局でも負けを悟ると早々にタクシーを呼んで即帰りする準備をし、マスコミへのコメントも「感想戦」も行わず(これは異例だそうだ)タクシーで帰途に就いたとのこと。
最後の最後まで勝ちを狙ったのに敗北した悔しさが、真正面から伝わってくる行動ではないか。
最後はすがすがしく涙を湛えて「今までありがとうございました」とコメントするのも美しいが――
これはこれですがすがしいのとはまた別の、勝負師としての最後にふさわしい幕切れである。
加藤九段、長い間お疲れ様でした。