12月10日、安倍政権は歴史的な閣議決定を行った。
ヤクザや暴力団を意味するはずの「反社会的勢力」の定義として、「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難」とする答弁書を作成することを決めたのだ。
これは、もし現安倍政権に様々な政治的・経済的功績があったとしても、ただこれだけでその全てをひっくり返してしまうような決定だと私は思う。
いったい今まで、警察が反社会勢力を取り締まってきたのは何だったのか。
民間企業にあれほど反社と関わるな、契約書の条文にも反社会関連のことを入れろ、と指導してきたのは何だったのか、という話である。
誰もが反射的に思ったと思うが――
もし反社会的勢力の定義が「その時々の社会情勢に応じて変化し得るもの」であるなら、それは時の政権が決めるものなのだろうか。
そして、あの宮迫博之らお笑い芸人らが反社の飲み会に出席して10万円ばかし受け取った「だけで」謹慎状態に追い込まれたというのは、いったい何だったのだろうか。
これに加えて私はもう一つ、反射的に思ったことがある。
それは、あの半世紀もFBI長官を務めた「独裁者」フーバー長官が、「アメリカにマフィアなるものは存在しない」とあくまで言い張ってきたことである。
アメリカにマフィアなるものが存在するのはそれこそ当時の(アメリカの)小学生でも知っていたことだと思うが、それでもフーバーは認めなかった。
その理由については、生涯独身だったフーバーが実はゲイであるという証拠をマフィアに握られていたからだ、という巷説があるのは有名な話だ。
今回政府がこんな閣議決定をしたのは、言うまでもなく例の「桜の会」に反社が出席していたという疑惑があるからである。
そしてこんな閣議決定をした以上、その疑惑は真であったのだろう。
実際に桜の会には、(従来の定義では)反社会的勢力としか言いようのない者が招かれていたのだろう。
さて、これからが大変である。
これから警察は、どのように民間企業に「反社との繋がりを持つな、断て」と指導するのであろうか。
何せ反社の定義は「決まっていない」のである。
もちろん本当は「反社会的勢力対策法」などという法律を作って、その第1条に定義を書くべきなのだが――
しかし立法府たる政府からしてこんな閣議決定をするのだから、当然そんなことはできないということになる。
私は別に安倍政権にハッキリ反対というわけではないが、しかし今回の決定だけで倒閣を目指す理由には充分なると思う。
世の安倍政権の熱烈的支持者の方々は、今回のことをどう思っておられるのだろうか……