世の中には、社会にとっても個人にとっても重大なことのはずなのにエンタメ素材になる社会問題、というのがあるものである。
現下、その最もいい例は「婚活・恋愛における高望み」というものだろう。
これには男の(女に対する)高望みと女の(男に対する)高望みの2種類があるのは言うまでもないが、ことエンタメ素材としては、どちらかと言えば後者の方がよく用いられている(用いられやすい?)ようである。
(⇒ まいどなニュース 2026年1月24日記事:アラフォー女性の婚活「年収1000万、イケメン、年下で!」 高望みをやめられない38歳元CA 幻想に弄ばれた婚活女性の末路【漫画】)
婚活高望みがエンタメであるとはどういうことか、むろんそれはその高望みを「バカだね~」とみんなが笑って楽しむという意味だ。
特に「自分の高望みを高望みと思っていない」天然の――そして抜きがたい――バカさ加減が要点であり、世人の爆笑を誘うのである。
そして「男の高望み」と「女の高望み」にはやや違いがあり……
前者は笑いよりむしろ、怒りやキモさを掻き立てるプロパガンダ的・ホラー的な色合いが強いと思うのは、私見に過ぎないであろうか。
たとえば男の高望みの代表例(というか、ほとんどこれである)は、「自分が40代なのに相手の女性には20代を望む」という年齢に関わるものである。
これはおそらく笑いより、何だか底知れぬキモさを感じさせるものであるだろう。
それに比べれば女の高望みは多種多様で、身長・財力・イケメン度・共感力など、少なくとも片手の指では数え切れないくらバラエティに富んでいるようだ。
しかしここに、それがあるのは誰にも明らかにもかかわらず、エンタメ化されていない「男の高望み」というものがある。
もちろんそれは「顔面レベルの高望み」である。
私見では男の高望みの最たるもの、たぶん年齢よりも大きいはずの高望みは、この顔のランクというものだろう。
平たく言えば美人かブスか、その男にとって許容できるレベルの顔の作りか、ということなのだが……
これがエンタメ化どころか「普通の婚活記事」でさえほとんど取り上げられることがない理由は、当然あなたにもおわかりだろう。
むろんそれに触れれば、必然的に女性にはブスがいる――
よりマイルドに言えば、一般には好まれない顔立ちの人がいる、ということに直結してしまうからである。
これはまさに現代日本におけるタブーであり、たとえはかないネット記事であれ、そんなことを臭わせるわけにはいかないのだ。
当然あなたも気づいているはずだが、婚活だの恋愛だのの記事に付される女性のイラストは、(それが「イラストや」式のものでなければ)決まって揃いも揃って美人ばかりである。
その高望みを嘲笑される役の女性でさえ、ブスに描かれていることは滅多にない。
普通に考えれば何だかみんな、「これくらいの顔面レベルなら婚活に苦戦しないだろう」と思わずにいられない顔立ちばかりなのだ。
しかしもちろん現実世界には、美人ならざる女性がたくさんいる。
いや、もしかしたらそのような女性は、高望みネタになる前提の「婚活市場への上場」も自主的にしないだろうから――
案外と婚活記事界・エンタメ界に描かれる女性像は現実に近いのだ、と言って言えないことはないのかもしれない。
しかし、このブログで何度か書いてきたことだが、この「どこを見ても美人ばかり」という現代社会の環境は、それこそ男性の高望みを自分では高望みと思わせなくしている最大要因ではあるまいか。
(⇒ 2021年12月25日記事:上野千鶴子「<美人>はアウトだが<イケメン>はOK」の真実)
それにしても「女の高望み」は社会的エンタメになるが、「男の高望み」の最大要素である「顔面レベル」は触れられることすらないというのは、いかにも不均衡である。
これはまるで、「とにもかくにも女性が婚活市場に出てくるのは、それなりの美人であることが前提」と暗に言っているように思えるのだが……