これは今年最大の、日本を揺るがすような超大ニュースである。
日産自動車の会長を務め、日本で名を知らぬ人はいないほど有名なカリスマ経営者、カルロス・ゴーン氏(64歳)が、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された。
自身の報酬を何十億円も過少に申告したということで、平たく言えば「税金逃れ」である。
(アル・カポネの逮捕容疑と似ている。)
(⇒ 産経新聞 2018年11月19日記事:日産のカルロス・ゴーン会長逮捕 報酬過少申告の疑い 東京地検特捜部)
いや、大物でなくても小物でも、たとえどんな善良な人間であっても――
税金逃れしたいとの衝動は、ことによると性欲の衝動さえも上回る。
年に10億円もその上も報酬をもらう金持ちなら、税金逃れなんかしなくていいじゃないかと思うのは、人の心を知らぬもので……
どんな善人も金持ちをも狂わせてしまうのが、蓄財と税金逃れの底知れぬ魔力というものである。
それにしても逮捕容疑が「自らの報酬の過少申告」って、税金逃れのスキームとしては極めて単純なものに思われる。
(スキームと言うも愚かしい単純さだと感じる。)
これには代表取締役のグレッグ・ケリー氏(62歳)も関与していたと言うが、別にこんなのガイジンエリートのアタマでなくても小学生でも考えつきそうなやり口ではないか?
なお、ゴーン氏は会社のカネを私的流用もしていたという。
そしてこれらのことが東京地検特捜部にキャッチされたのは、「内部告発」によるものだったそうである。
やはり日産にもどこにでも、カリスマの裏の顔を知り「許せない」という人はいるものだ。
こういうことは確かに間欠的にではあるが、世の経営者・経営陣の戒めにもなるだろう。
それにしてもカルロス・ゴーンと言えば、故スティーブ・ジョブズとまでは行かないが――
現代日本を代表する超大物経営者であり、ビジネス・スーパースター列伝に名を連ねるべき人物であった。
いわば「青い目の経営の神様」であり、まるで現代の松下幸之助のような賞賛を受け続けてきた。
それが「報酬の過少申告」なんていう、正直言って単純な「そんなに頭の良さを感じさせない」ことをしたとして逮捕されたのだから……
やっぱりどんなに経営が上手かろうとカリスマと呼ばれようと、どんな人間も「商才のあるただの一般人」に過ぎないのだという思いを強くする。
人間のやることなんて、やりたいと思うことなんて、別にそんなにたいして変わりはないのである。
しかしそんなことみんなわかっているはずなのに、どうも人間は「カリスマ」を作って褒め称えることを止めようとしない。
端的に言えばそれが商売になるからだが、こんな心がナチュラルに大部分の人間の中にあるとすれば――
それはもう、ヒトラーみたいな人間が頂点に立つ日が再び来るのは疑いようもないことである。