9月29日、アサヒビールはどこかからのサイバー攻撃を受けて大規模なシステム障害が発生した。
これによりビール等の受注も出荷もコールセンター業務までも止まり、会社の判断で国内生産工場30カ所もほとんどが停止となった。
おまけに――おまけなのか意図的なのかもわからないが――この日に予定されていた新商品発表会も中止となった。
(⇒ 2025年10月2日記事:サイバー攻撃でアサヒ工場30カ所がストップ、ビール大乱に発展か)
さてこの事件、私には戦慄的なほど恐るべき重大事態だと思うのだが、どうも報道はどれほど大きくないようである。
そのことも不思議ではあるが、しかしもっと不思議で意外であるのは、これほどのサイバー攻撃の標的が「ビール会社」だという点だろう。
皆さんもそうだと思うが、サイバー攻撃の標的になると言えば思いつくのは電力会社を筆頭とする社会インフラ企業であり、そうでなければ政府機関(もちろん軍を含む)など公共的な団体である。
そこでビール会社を思い浮かべる人は、1000人中1人もいまい。
そして私の知る限り、世のサイバー防御「専門家」でビール会社が攻撃の標的となって今回のような大打撃事態をもたらすと予想した人も、また一人もいない。
まさに予想外・想定外・斜め上の攻撃であり、実に世人の意表を突いた選択である。
私は別に、このサイバー攻撃者を褒めるつもりも支持するつもりも、もちろんないが――
しかしこの目の付けどころは、慧眼と言っていいような気がする。
何というか絶妙に、社会に実害を与えながらも社会を揺るがすと言うほどではなく、それでいて社会に大きなショックを与えることになっていると思うのだ。
むろんこれは、日本のビール会社(の中でもアサヒビール)を初めからターゲットにしていたと言うよりは、サイバー防備の弱い会社――ただし,ある程度は名の通った企業――を探していてたまたま見つかった中の一つが、たまたまアサヒビールだっただけなのかもしれない。
これはアサヒビールにとって、一種の不運や偶然に過ぎないのかもしれない。
だが、そうだったらそうだったで、なお恐ろしいことではある。
この正体不明のサイバー攻撃者は、防備の弱い会社をどうやってか探し当てて攻撃をもくろむ、まるで無差別襲撃の通り魔のような存在だということになるからだ。
そして、ここで私は、いつもながら疑問に思う。
世のサイバー攻撃者というのは、攻撃するならなぜ公共機関を、具体的に言えば小規模市町村とかを選ばないのだろうか。
もちろん私はこの手のことに全く知識がないのだが、アサヒビールへのサイバー攻撃を成功させられるのであれば、小規模市町村(いや大規模であっても同じか?)など朝飯前で料理できるように思える。
それをすれば、いかに名が知れているとは言え、ただ一企業を麻痺させるよりはるかに大きな反響が得られると考えるのは間違いだろうか。
あるいは同じ企業にしても、たとえばディズニーや任天堂、さらにはテスラとかを狙う方がさらに「名声」が得られるのではなかろうか。
確かにそれらの企業は、アサヒビールよりはサイバー防御が堅そうだが――
しかしそれを言うなら、アサヒビールよりはるかに防備の弱い一流企業なんてゴマンとありそうではないか。
となるとやはり「アサヒビールに恨みがある者」「特にアサヒビールを選ぶ理由がある者」の犯行と見るのが常道ではあるが――
しかしそれは、さらに犯人像が想像しがたいものになってしまうということでもある。
そういう犯人像の浮かばなさという点をもってしても、アサヒビールを標的に選んだのは「秀逸」と言うべきなのかもしれない。
もしかしたら犯人像を推理するには、それこそ推理小説でよくあるように「第二の犯行」を待たねばならないことになるのだろうか……