70歳の女性漫画家・たつき諒というベテラン漫画家の漫画『私が見た未来』が、2025年7月に日本を壊滅させるような大災害が起こる――
と予言したというので、話題になっている。
これのせいで中国(香港?)からの来日客も急減する始末で、日本政府の官房長官も言及するし、BBCやCNNでも報道されるほどのビッグウェーブとなっている。
私はこういうことに興味がないので(笑)、もちろん漫画は買って読んでいない。
しかし漫画では、7月5日というのはこの漫画家が夢を見た日(眠りから目覚めた日)ということになっているらしいのだが――
それがなぜか、大災害が起きるのが7月5日だと変換されて世に広まっているという。
つくづく人間って、かくもいい加減なものである。
そしてこの漫画は、既に100万部が売れたという。
ということはこの漫画の予言、確かに「大当たり」だ。
もちろん「的中した」という意味でなく、「大ヒットした」という意味である。
これはあの、超有名予言者ノストラダムスの――それを利用した五島勉 氏の――「1999年人類滅亡」説以来の大ヒットであり、
マヤ暦で世界が終わる日と言われた「2021年世界滅亡」説をはるかに凌ぐ大ヒットでもある。
それにしても「世界最大の予言者」とも言われたエドガー・ケイシーによれば、日本はとっくの昔に(20世紀中に)海に沈んでいたはずなのだが……
どうも日本が大災害で壊滅するとか物理的に沈没するとかいう予言は、衰えることなき魅力と人気を持ち続けているようである。
日本では(日本人には)、中国や朝鮮半島が壊滅するという予言の方がはるかにウケる気がするのだが、なぜかそういう予言はされもしないし紹介されもしない。
逆に中国や朝鮮半島では、自らが壊滅するという予言がなぜなされていないのか、されているとしてもなぜ大ヒットしないのか、ここらへんも興味あるところではある。
ともあれ日本では、たつき諒という人はノストラダムスに続く大ヒット予言家・「稼げる予言者」となった。
そしてまた、依然として予言というものが、大なる富と影響力をもたらすコンテンツであるということが証明された。
これは、21世紀が「大予言の時代」となることをそれこそ予感させるものである。
ところで私はこの件で、日本史の教科書にはたいてい出てくる江戸時代の本、式亭三馬の『浮世床』の中の一つのフレーズを思い出さずにはいられない。
うろ覚えで書くと、それは
「唐辛子なんてどこの家でもそんなに使うもんじゃないのに、それを売るのが江戸じゃちゃんと商売になっている。
この江戸で暮らしていけないなんて言ってる奴は、どうしようもない連中だ」
というものであった。
それを今回の件に当てはめると、どうだろう。
この大ヒット予言をしたのは、70歳のおばあちゃんである。
その70歳のおばあちゃんが自分の見た夢を漫画に描いたら大ヒットして、莫大なカネをゲットである。出版社もウハウハである。
しかも世界的影響を及ぼすことにさえ成功しているのである。
式亭三馬なら、こう書くのではあるまいか――
「70歳のおばあちゃんが夢に見たことを絵に描いて大金を儲けてるというのに、生活が苦しいカネがないと泣き言を言ってる連中は、どうしようもない奴らだ」と。
いやはや実に手厳しいが、しかしそういうことになるのではないか。
予言というものはたいていが――きっとそれが大ヒットする条件だから――残酷な内容であるものだが、
大ヒット予言者とそれに影響を受ける方の人たちの社会的成功格差というものも、とても残酷なものだと言っては、それこそ残酷だろうか……