今年1月13日は「成人の日」……
もちろん全国各地で、自治体主催の成人式――法的に成人に達するのは18歳となったので、正確には「二十歳のつどい」などと呼ばれる――が行われた。
さて、この成人式というもの、民法の規定どおり18歳を対象にして開催する自治体もあるにはあるがごく少数で、ほとんど全ての自治体は「旧来どおり」の20歳を対象にしている。
そして何より特筆すべきは、この成人式というのを「やっていない自治体」は日本に一つもないということだろう。
(私は自分で調べたわけではないが、もしそんな自治体があったら絶対にニュースになっているはずだ。)
これは知っている人も多いだろうが、成人式とは戦後に始まったものである。
その皮切りは終戦翌年の1946年、埼玉県の現・蕨市が開催した「青年祭」だという。
それが何とわずか3年後の1949年には、1月15日が「成人の日」だと国が定めるに至ったのだ。
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いやはや、当時の埼玉県蕨市の市役所は、別にこうなることを狙って青年祭を催したのではないと思う。
別に全国展開を狙ったわけではなく、遠い将来を見据えた戦略展望などなかったと思う。
それがどうだろう、たった3年でこんな式典が国に公認されるのだから、これは驚くべき大成功・大ヒットイベントだと言うべきだろう。
そしてさらに驚くべきは、こんな式典が日本全国津々浦々、催さぬ街はなしという状態にまで普及し――
2025年の今となっては、ほとんど全国民にとって「人生に必要不可欠な大事な式典」とまで思われるまでに至ったことだ。
なるほど世の中には、成人式なんか廃止してしまえと言う人もいる。
しかしもし、どこかの自治体の首長が成人式廃止なんか言い出しでもしたら、猛反発を受けボロクソ言われて叩かれるのは目に見えている。
おそらくどんな革新的な型破りの剛腕ワンマン首長と言えども、決して成人式廃止など本気で言い出すことはないと思われる。
これは大袈裟ではなく、もはや成人式の開催は人権問題であり人道問題と言っても過言ではない。
それを廃止するなんて、人権蹂躙・非人道的もはなはだしいものだと多くの人たちは思っている。
仮に万一成人式を廃止した自治体があるとすれば、その自治体から引っ越して出ていく者も決して少なくないだろう。
いやそれよりも、早々に成人式復活を訴える者が首長選に立候補し、そのワンイシューだけで当選してしまうだろう。
しかし、それにしても――
この「一定年齢に達したことを、全国全ての自治体が式典を開催して祝う」という風習は、たぶん世界で日本だけである。
ある意味これは「奇習」とも言えようか。
ところがそういう奇習が、戦後すぐの日本人にはバカ受けした。
それどころか戦後80年を迎える今、ますます強固で熱烈支持を受ける「新しい伝統」として、日本にガッチリ定着している。
思えば今の日本では、結婚式は「誰でも経験する式典」ではなくなった。
そしてまた各地の伝統の祭りなどもまた、参加者減少・後継者不足で断絶・絶滅しようとしている。
そんな中で成人式のみは、まるでそれらを吸収併合するかのように全国で大繁栄・大普及を遂げている。
おそらく近未来の日本祭礼史とか日本イベント史において、成人式は「旧来の各地の祭りに取って代わったもの」として位置付けられるのではなかろうか。
また、いったい何がここまで現代日本人に成人式を愛好させるのか、人生に必要不可欠な式典だと思わせるのか、本気で研究する人も出てくるだろう。
それにしても、もし「新たな伝統創出事業」という事業カテゴリーがあるとしたら、成人式は明治以降の「初詣の習慣」「夫婦同姓」などと並ぶ最大級の大ヒット成功作ということになるのではなかろうか……