アパホテルの元谷外志雄(もとたに としお)代表が「藤誠志」というペンネームで書いた、『本当の日本の歴史 理論近現代史』という本には、南京大虐殺を否定する内容が含まれていた。
その本がアパホテルの全客室に置かれたことで、中国とアパホテルが全面戦争状態に入っている。
中国は本の撤去を求めたがアパホテルは応じず、
2月に札幌市で行われる冬期アジア大会の組織委員会が(婉曲的に)撤去を求めてもやはり応じず、
中国国家観光局は「全ての旅行代理店とオンライン旅行サイト」に対し、アパホテルとの関係を絶つよう要請した。
このことについて、もちろん日本のネット界には「言論の圧力に屈しないアパホテル」を賞賛・応援する声が強い。
さて、この本題に入る前に、まずいくつかの前提を書いておきたい。
一つは、私には南京大虐殺があったかなかったか判断する知識がないし、あったとしても別に自分が申し訳なく思う気持ちにはならない、ということである。
自分がやったことでもないのに罪の意識を抱くというのは正直、かなり異常な――というのが言い過ぎならば、かなりの共感過多症候群の一例ではないかと思っている。
私にとって南京大虐殺とは、第4回十字軍のコンスタンティノープル略奪・虐殺と同じくらいの関心度である。
(つまり、全く興味がないわけではないが、そこまで興味があることでもない。)
もちろんかつての大日本帝国にそんな愛着があるわけでもなく、神聖ローマ帝国とかシュリーヴィジャヤ王国などに抱く関心とそんなに変わりはないのである。
(しかしもちろん“地元の国”なのだから、その他の国に対するよりはきっと関心が高いのだろう。)
よって、南京大虐殺があろうがなかろうが、とにかく真実が知れさえすればそれでいい。
もしかつての日本人が犯した罪を現代日本人が(子どもや学生たちまで)負うべきだ/引き継ぐべきだと主張するなら、それはとりもなおさず――
「親の罪・先祖の罪は子々孫々背負うべし、引き継ぐべし」というトンデモ道徳哲学を支持するのだ、ということになろう。
(だからモンゴル人なんて、とてつもない虐殺罪を今も背負っていることになる。)
もう一つは、アパホテルを非難し米トランプ新大統領の保護主義を批判する中国という国が、ますます自国人民に情報を与えない“情報鎖国”に傾斜していることである。
この1月24日、中国の工業・情報化省は、自国でのVPN回線(仮想専用線)の利用を政府許可制にすることを発表した。
中国はすでに自国民がインターネットに自由アクセスできないよう「グレート・ファイアウォール」を構築しているのだが、これまでは月額10ドル程度でVPNを経由し「検閲対象サイト」にアクセスできていたらしい。
それが使えなくなれば、グーグル・ツイッター・フェイスブックにも自由にアクセスできず、むろん中国政府に不利な情報・批判などにも自国民は触れられない。
いやはや、もうこの一点だけで、現代中国という“中国共産党王朝”は、見下げ果てた下等国家だと感じる。
(「中国人が」ではない。「中国共産党王朝が」である。)
大昔、鎖国と言えば日本だった。
しかし中国にも意外と言えば意外だが、鎖国的な伝統がある。
(明王朝は東アフリカまで到達した鄭和(ていわ)の大航海の業績を廃棄し、鎖国的な海禁策に舵を切った。)
しかしそれを考えても、この現代にインターネットを許可制にするなんて、まったくたいした暴君的ロクデナシぶりである。
もっともこれは、古今東西の王朝末期によくありそうな、断末魔的やり口と見ることもできる。
“最近”の中国統一王朝は、相当長続きする傾向にある。
明王朝は276年、清王朝は(満州での建国から数えれば)296年続いている。およそ300年とみてよい。
現在の中華人民共和国(中国共産党王朝)は1949年成立なので、2017年時点では68年の経過である。
さて、現代の世の中の流れは、明や清の時代とは比べものにならないほど速い――
しかし国家というのは一般的に、世の中の流れよりはだいぶ長持ちするものだ。
そこで試みに、現代中国での王朝興亡速度は、明清時代の「5倍」だとしてみよう。
“明・清300年 ÷ 5 = 60年”
おや、5倍は速すぎるようだ。60年で滅亡するなら今の中国はすでに滅んでいることになる。
では、4倍なら。“明・清300年 ÷ 4 = 75年”
また、3倍なら。“明・清300年 ÷ 3 = 100年”
さすがにこの現代が、かつての速度の1~2倍の“遅さ”だとは思いがたい。
よって、中国共産党王朝の寿命は75年から100年の間であると見当をつけるのは、そんなに的外れではないと思う。
しかしそうなると、現王朝の寿命はあと7年~32年で尽きることになる。
今の中国が7年で滅亡するとはやはり思いがたいが、30年程度で滅亡するというのは、これまたそれほど的外れではないのではなかろうか。
そして中国統一王朝の滅亡パターンと言えば、「農民叛乱の血の海に沈む」か「外敵に征服される」か、そのどちらかに相場が決まっている。
私としては、前者の方にカネを賭けたいところである。
ところで、イスラム国に“宣戦布告”とかしている国際的ハッカー集団(勝手連とも言う)「アノニマス」は、この中国の情報鎖国に対して何を思っているのだろう。
市民・人民の自由を大切に思うなら、ますます中国共産党王朝は、断じて許せぬ人類の敵とみなされるのが当然ではないか?
いやまったく、アノニマスのみなさんは、クジラ漁を理由に日本を攻撃している場合ではない。
今こそ自由の情熱に燃え、ネット情報から遮断された中国人民を救うべく、「悪の帝国」に人民解放戦争を仕掛けるべき時ではないか?
まぎれもなく人民の情報アクセス権と思想とを抑圧している帝国に、総攻撃をかけるべき時は今ではないか?
それとも中国のITセキュリティ技術は、アノニマスほどの名声を持つハッカー集団でも歯が立たないほど強固なのだろうか。恐れられているのだろうか。
しかしおそらく、いずれ中国の現王朝は崩壊を迎えることになる。(このブログを読んでいる人の大部分が生きているうちに。)
今のような情報鎖国が100年も200年も続くなんて、まともな人間なら誰一人思わないからだ。
この世の中に、世界史に、鎖国が続いたためしなし――
中国統一王朝の滅亡は、(20世紀でのソ連滅亡がそうだったように)21世紀で最高にエキサイティングな出来事になることだろう。
(しかし、もちろん、みんなやっぱり速やかに忘れ去ることになるのだが……)