プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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カラテカ入江、吉本興業を解雇-「人脈自慢」にロクなのはいない、の巻

 カラテカ入江慎也(42歳)が、所属する吉本興業から契約解除された。

 明日6月7日発売の『FRIDAY』で、次のことがスッパ抜かれたからだという。

●2015年、振り込め詐欺グループの男女40人が逮捕された。

●そのグループが2014年末に開催した忘年会に、

 ・雨上がり決死隊宮迫博之

 ・ロンドンブーツ1号2号田村亮

 ・レイザーラモンHG

 ・ガリットチュウの福島善成

 らが出席しており、

●彼らとグループの仲介役を入江が務めていた。


 吉本興業は以上の5人に聞き取り調査を行い、入江はその事実を認めた。

 他の4人はそんなグループの忘年会だったとは知らなかったとして、厳重注意処分で済んだらしい。

 週刊誌の発売前日という、迅速と言ってよいのかギリギリのタイミングと言った方がいいのかはわからないが――

 反社会勢力と関わるのは許さないという、吉本興業の姿勢を世間にアピールできることは間違いない。


 私には入江が相手が「振り込め詐欺グループだと知ってて」他の芸人にはそれを伝えずに参加を呼びかけたのか、

 入江自身が振り込め詐欺グループとズブズブの濃厚関係にあったのか、

 そんなことはまるで知らないしわからない。

 しかし一つ感じることがあるとすれば、それは

「人脈自慢にロクな奴はいない」

 という、世間の一般常識のはずの「法則」を再確認したということである。


 入江は「芸能界随一の幅広い人脈を持つ」と言われ、自分でも「友だち5000人」「合コン界のファンタジスタ」と称していたという。

 その「人脈力」を高く評価されて企業などの講演依頼が引きも切らず、解雇される前日も帝国ホテルで保険営業従事者らに講演会を行っていたようだ。


 私はとても不思議なのだが――

 就職活動なんかで面接官に「あなたの強みは?」と聞かれて学生の方が「人脈が広いことです」とでも答えれば、

 「なんだコイツ」と鼻白まれたりカチンとこられたり反感を持たれたりするのは、どんな世間知らずにでもわかりそうなものだ。

 しかし社会に出た途端、「人脈が広い」が自慢になったりスゴイと思われたり講演を頼まれてカネになったりするのは、いったいどういうわけなのだろうか。

 これは現代人の病、「コミュ力」至上主義の露骨な現れではないかと思うのだが、だったら学生が「ボクは人脈が広いです」と言ったら即座に反感を持つようなことは、今すぐ止めるべきである。

 そして、ある社会人が「人脈が広い」という事実には、危険極まるワナが潜んでいると思うべきではあるまいか。

 人脈が広いということは「ヘンな奴、アブナい奴」にも繋がっているということだ、と警戒するのは、それこそ社会人の嗜みではないかと思うのだが――

 なんでこう人は、そして企業は、

 コミュニケーション能力とか人脈力とか、

 あるいは「講演力(口の上手い力とも言う)」というものに、いとも簡単にメロメロになってしまうのか。

 「自分は人脈が広い」と公言する人を警戒するどころか、褒めて・仰ぎ見て・カネまで払ってその話を聞きに行く(研修に行かせる)。

 これはもう、世間知らずの純情乙女よりウブとしか言いようがない。


 それに――

 それほどまでにコミュ力なり「口の上手い力」なり人脈力が大事だと思うなら、

 いっそそういう企業は、お笑い芸人こそ社外取締役や特別顧問に迎え入れるべきではあるまいか。(自社のOBとかではなく)

 就職面接も、全て一芸入試で決めた方がまだしも筋が通っているのではないか?

元農水事務次官のダメ息子殺害は「同情の嵐」とネットニュースは書くべきでは/「ハズレくじ」問題の時代

 6月1日、元農林水産省事務次官(中央官僚のトップ)を務めた76歳の父親が――

 引きこもりでネットゲーマー、家庭内暴力者でもあったという44歳の息子を殺害して逮捕された。

 何でもこの息子、ネット上では「月に課金30万円台」とか自慢ツイートしていたらしい。

 そしてその日父に殺害されたのは、この息子が「隣の小学校の運動会がうるさい」と文句を言ったことに端を発するらしい。

 さらに加えて父親の供述によると、この息子は日常的に家庭内暴力を振るっていたとのこと。

 
 なんとまあ、聞けば聞くほどクズである。

 いくら殺されたからと言って、こんな人間をクズと思わない方が難しい。

 当然というか何というか、ネット上ではこの父親に同情する雰囲気が圧倒的に多数派となっている。

 いや、もしかしたら――

 つい先日発生した、子ども狙いの「引きこもり殺人鬼」川崎市51歳のような惨劇が起こるのを、この父親は未然に阻止したことになるのかもしれない。

 そうだとすると、この父親は悲劇の英雄と言っても過言ではないだろう。

 だったら特にネットニュースなんかは、この父親について「共感の嵐」とは言わずとも、「同情の嵐」と報じてもいいのではないか。

 だって普段は毎日のように、芸能人がちょっとなんか言ったら「共感の嵐」「賞賛の嵐」とか判を押したようなタイトル記事を付けているのだから……


 しかし、それはともかくとして――

 つくづく感じざるを得ないのは、現代が「ハズレくじ問題の時代」だということである。

(⇒ 2018年6月13日記事:「小川勝也参院議員の息子また児童猥褻で逮捕」と「新幹線殺人者・小島一朗の父の他人事な態度」-「ハズレくじ」問題という人類・人生最大級の問題)

 
(⇒ 2018年6月27日記事:富山警官殺し拳銃強奪事件:小学校は「社会の捌け口」なのでテーザー銃を/遺伝子操作で防ぐ「はずれクジ」問題)

 

 よく「子は親を選べない」と言うが、その逆の「親も子を選べない」というのもまた真である。

 世の中の親は、それも「よくできた親」であっても、誰もこの「ハズレくじ」問題から逃れられない。

 全国の親の中には確実に、今回殺されたドラ息子とか川崎市51歳のようなクズ人間を、どうしようもなく子に持つ人がいるのである。  

 これはもう、育て方が悪かったとかどうとかいう問題ではないのは、全ての人間がわかっているはずだ。

 世の中にはクズ人間がいる。

 必ずクズ人間が生まれてくる。

 クズ人間は、生まれたときからクズになる素質を内蔵している。

 結局のところ幼女が好きで好きでたまらない人間は、生まれつきそうなのである。

 そうでなくても、そんなスイッチを内蔵して生まれてくる。

 これはもしかしたら、今を生きる日本人にとって最大級の「人生の心配事」ではないだろうか。

 すなわち、わが子だろうとその他の人だろうと、「ハズレくじ」を引くのが日本人最大の、そして最も身近な現実的恐怖になってはいまいか。


 たとえ結婚したくとも、

●その相手は、実は(パートナーを奴隷化するような)サイコ人間かもしれない

●生まれてくる子がロクデナシだったら、引きこもりになったら、いじめっ子にいじめられっ子になったらどうしよう

●付き合いのできる親戚に、ヘンな奴はいないだろうか

 とかいう恐れは、実は地味に非婚化や「子どもを持つ」ことそれ自体に影響を与えているような気がする。

 また、日本人の間で特に強いと言われる「孤独好き」にも、影響を与えている気がする。
 

 たぶんこういう心配事、日頃からネットやテレビで情報を多く仕入れている人ほど深刻になると思われる。

 そして世は「ニュース化社会」である。

 社会の大勢の人が、次から次へとこんなクズ人間のことを情報として聞かされていれば、それはもう恋愛だろうが何だろうが「人と関わる」こと自体を避けるようになるのは自然である。

 先進国になればなるほど出生率は低くなる、特にアジア諸国でその傾向が強くなる、と言われるが――

 それはおそらく経済的要因とか女性の地位の低さとかだけではなく、「クズ人間ニュース」の流れる度合いも影響しているのではないか、と感じるのである。

「負け組かつ行き詰まり世代」の復讐殺人は激増する-川崎児童襲撃事件もその一つ

 川崎市の路上で女子児童らを包丁で襲い、自らも首を切って自殺した51歳の男とは、どんな人物なのか――

 別にプロファイラーの手を借りなくとも、またこれから報道される知識が一切なくても、ほとんどの人は(ほとんど反射的に)その人物像を頭に思い描くことができるはずである。

 その人物像とは、

「負け組」

 かつ

「行き詰まり組」

 というものだ。

 加えて言うなら、彼がそんな「負け組かつ行き詰まり組」になってしまったのは――

 「まともな会社なら誰も雇おうとしないようなロクでもない人間」だからだろう、ということになろうか。


 かの映画『アメリカン・サイコ』ではあるまいし、一流企業のエリート高収入社員がこんなことをするというのはまずない。
 
 負け組というだけなら、若い世代にもゴマンといるはずだが――

 しかし加えてそれが51歳ともなると、「もう一生、この下流人生から抜け出せない」という行き詰まり感を覚えても全然おかしくない。

 普通に働いている人だって、この年代になれば(会社での・社会での)自分の限界点というのがそろそろ見えてくるはずである。

 その時点で負け組なら、ほぼ間違いなく一生負け組のまま(と自覚する)。

 若い世代ならまだ未来に漠然とした希望をかけられるが、40代いや特に50代ともなると、「未来の希望」を抱けなくなってしまう。

 
 となると誰でも思うとおり、これからの日本はそういう「負け組かつ行き詰まり組」がますます増える社会となる。

 かの就職氷河期世代、つい最近「人生再設計第一世代」などと名付けられてしまった世代にはその予備軍が大勢いるということを、あなたもきっと予感しているはずである。


 そしてその激発の標的が「上流階級」に向かうというのは、それはそれで一種の筋が通っている。

 今回の襲撃犯がカリタス小学校という(よく知らないが)いかにも「上流家庭の子女」が通いそうな学校の児童を狙ったというのは、明らかにその流れのうちにあると思われる。

 「この惨めな自分の人生、せめて上流の奴らを何人かでも殺してから終わらせてやる」

 と決意するのは、確かに「理解できない」どころか、充分に我々の想像の範囲内にある心の動きだ。


 今回の犯人、包丁4本を用意してそのうち2本を両手に持って襲撃に及んだ割には、残り2本はリュックに入れたままで――

 スクールバスの運転手に「おい、何してる!」と叫ばれた途端に自分の首を刺したようだ。

 たぶん数人を刺し終えたということで、「とにかく俺はやった」と瞬間的に「満足」してそうしたのだろうか。

 この「上流階級&成功者に一矢報いる」という怨念そして復讐の念は、もちろん他の人間にはなくさせようもないものである。

 よって対策はないのだが、もしあるとすれば――

 それは「何事も自己責任」という観念を人々に植え付け普及させる、それにより「殺すのは自分自身だけ」にさせるという、何とも救いようのないものになってしまうだろうか……