プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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イランにアメリカ圧勝-地上戦のない戦争は戦争と言わない?

 アメリカとイスラエルの連合軍によるイラン攻撃は、初日からイランの最高指導者ハメネイ師はじめ要人たちの殺害に成功するなど、アッという間に圧勝・完勝の様相を見せている。

 イスラエルを除けば中東最強最大の軍事大国と目されるイランでさえ、この有様だ。

 これはつい最近(たった2ヶ月前)のベネズエラ攻撃――マドゥロ大統領は殺されず連行されただけで「済んだ」のだから、かなり幸運に思える――に続き、アメリカ軍というのが世界の他の国とは隔絶した異次元の強さを持っていることを、あまりに強烈に世界へ印象づけたと言えるだろう。

 いくら「もう一つの最強国」イスラエルとの協働とは言え、こんなことができるのは世界でアメリカしかいない。

 ロシアにもこんなことはできず、だからこそ現にウクライナ相手の戦争が、独ソ戦を超える長さになってしまって今も継続中なのだ。

 またもし中国がアメリカと張り合おうとすれば、世界のどこかでこんな風に「他国の指導者を初っぱなから電撃殺害してしまう」ことを実演しなければならないのだが、とてもじゃないがそんなことはできないだろう。

 が、それらは今回記事の本題ではない。

 今回のアメリカ&イスラエルによるイランの攻撃、アメリカによるベネズエラの攻撃、これらは戦争と言えるのだろうか――

 一般化して言えば、はたして地上戦のない戦争は戦争と言えるだろうか、いや戦争と言われるのだろうか、という疑問が本題である。

 今回のアメリカ&イスラエルによるイランの攻撃は、まぎれもなく両陣営の戦争だと考えられる。

 しかしまだ誰も?これを「イラン戦争」などと言っている人もメディアもいないようだ。

 また、アメリカによるベネズエラ攻撃を「ベネズエラ戦争」「アメリカ-ベネズエラ戦争」と呼ぶ者はさらにいないと言っていい。

 それでいて21世紀初頭のアメリカによるイラク(フセイン政権)攻撃は、ちゃんと「イラク戦争」と呼ばれている。

 また現在進行形のロシアによるウクライナ攻撃も、やはり「ウクライナ戦争」または(確かに一般的ではないが)「露宇戦争」と呼ばれている。

 さて、このように世間一般で「戦争」と呼ばれるかどうかの違いは何なのだろう。

 私にはこれは、「地上戦があるかないか」の違いだと感じられる。

 やはり地上戦のない戦争、航空戦だけの戦争というのは、世間の人たちにとって戦争と呼ぶに値しないのではないか。

 変な言い方をすれば「なんてったって地上戦」であり、それがない戦争なんて戦争の内に入らない、という意識があるのではないか。

(ということは、たとえば「海戦」だけの戦争もまた、戦争の内に入らないのだろう。)

 
 しかしこれが正しいとしても例外はあって、1980年代にイギリスとアルゼンチンが戦ったのはフォークランド「紛争」と呼び「戦争」とは呼ばないのが(日本では)定番である。

 フォークランド島で確かに地上戦があったのだが、それでも戦争の名は値しない、そこで行われた海空戦に比べればずっと影が薄いから、ということなのだろうか。

 だがもっと意義深い考え方は、今のアメリカのやっていることは従来の戦争の概念を塗り替える、新型の戦争形態だということかもしれない。

 よくある言い方で言えば「戦争2.0」みたいなもので――

 我々はこのニュータイプの戦争を、(明らかに戦争であるのに)戦争なんだと認識できない、ということなのかもしれない。

 このニュータイプの戦争とは、「敵の指導者・指導部だけを攻撃抹殺する」戦争の型である。

 もちろん、敵の前線兵力ではなく指揮中枢をこそ攻撃せよと「必勝法」は古い古い歴史を持ち――

 第一次大戦中・後のイギリスのフラーは、早くも新兵器・戦車の機動力による敵の指揮中枢の蹂躙を強く主張していた。

 現在のアメリカの圧倒的航空力と精密兵器は、とうとうその理想的必勝法を極限まで現実のものにした、敵の総大将とその取り巻きだけを――もちろん本当に「だけ」ではないが――殺して勝つことを可能にした、ということになる。

 これは21世紀版「電撃戦」とも言えるだろうが、しかし世界はこの従来の戦争っぽくない戦争の形を、まだ戦争と呼ぶ気になれないでいる……といったところだろうか。

 おそらく、独裁国・権威主義国には特によく効くだろうこの戦争形態、これからもアメリカは何度かやっていくと思われる。

 しかしそれはまだしばらくの間「戦争」とは呼ばれないだろうから、結果的に世界から「戦争」は起こらなくなっていく気がする(笑)

 さて、この戦争と呼ばれぬタイプの新型戦争、次にアメリカの標的になるのはどこの国だろうか……