3月8日、日本体育協会は、2023年から4年間の国民体育大会(国体)の実施競技を決めた。
その中で「銃剣道」が従来の隔年実施から毎年実施に昇格し、逆にボクシングは毎年実施から隔年実施に降格している。
なんでも競技ごとにジュニア世代の充実度や競技団体のガバナンス(運営ぶり)など6項目を点数化し、その合計点に基づいて決めたそうである。
(よく知らないがボクシングって、ジュニア世代の充実やガバナンスの確立が劣っているのだろうか……?)
そして文部科学省は3月31日の官報で、小中学校の新学習指導要領と幼稚園の新教育要領を告示。
ここで中学校の武道科目に「学校や地域の実態に応じて種目が選択できるよう」にとして、新たに「銃剣道」を選択肢として追加した――
と言われているのだが、本当は従来の学習指導要領で言う「武道」とは、日本武道協議会なる団体が正式採用している9種目――
柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道
の9種目を指しているとのこと。
つまりもともと学習指導要領には、中学武道の選択肢として銃剣道も入っていたのだが、新学習指導要領では削除されかかっていたらしい。
それがやっぱり削除されずに生き残ったことが、「新規追加」と報道されているようだ。
(ただ、今まで指導要領の解説だけに記載されていたのが、本文記載に「昇格」したのは事実である。)
さて案の定、「銃剣道が中学武道に追加」と報道されると、世の中ではたちまち拒絶反応が発生した。
もちろんそれは銃剣というものが旧日本軍を即座に連想させるからであり、忌まわしき軍国主義の復活(の企み)と直結してしまうからである。
これはもうこのニュースを聞いた100%の人が、そう直感したのではないか。
そして銃剣道の追加を支持する人は、そう直感した後で「いやいや、そんなことはない」と脳内で意識的に意識を切り替えようとしたのではないか。
その拒絶反応の中で代表的なのは、新潟県知事の米山隆一氏のツイッターである。
米山 隆一 @RyuichiYoneyama
2017-03-31 06:14:25
新学習指導要領で選択制とはいえ中学校の武道に「銃剣道」が入るとの事です。
私は反対です。
柔道、剣道、相撲はルールも整備され、競技人口も多くスポーツとして確立していますが、銃剣道はその状況になく時代錯誤としか言えません。恐怖を覚えます。
米山 隆一 @RyuichiYoneyama
2017-03-31 07:47:09
言わずもがなですが日本で「銃剣」を所持することはできません。
銃剣術を習っても護身に用いることは不可能ですし棒を使った護身術なら剣道が上です。
習った後競技を続けられる人も極めて限定されます。
当然ですが近代戦において何の役にも立ちません。
戦前精神論への郷愁以外のいったい何でしょうか?
銃剣道への拒絶反応は、おおむね次のとおりまとめられるだろう。
(1)それは軍国主義、戦前回帰、右翼的である。
(2)それは人殺しの訓練である。子どもにやらせるなどとんでもない。
(3)銃剣道は役に立たない。(実戦性がない)
(4)そもそも武道ではない。
(5)競技人口が少なすぎる。
まず(5)だが、日本銃剣道連盟によると、いま日本で銃剣道に取り組んでいる中学校は、神奈川県に1校しかないらしい。
そして銃剣道を教えられる教員は、全国にたったの10名程度。
確かに柔道、剣道、弓道、相撲、空手道、合気道、少林寺拳法、なぎなたの他8種目に比べれば、人員体制も世間的知名度も圧倒的に劣っている。
(私としては、全国に10人も教えられる教員がいるということの方が驚きだ。)
よって、他8種目をやっている人から言わせれば、(4)そもそもあんなのは武道のうちに入らないだろう、一緒にしてくれるな――
と思われているのかもしれない。
しかしもちろん、(4)(5)だからといって銃剣道への拒絶反応が生じているのではない。
その主たる部分は(1)~(3)にあるのは言うまでもない。