名作映画『フルメタル・ジャケット』(スタンリー・キューブリック監督)に “ハートマン(鬼)軍曹” として出演したロナルド・リー・アーメイ氏が、4月15日に亡くなった。(享年74歳)
あの映画を一度見れば、誰だってハートマン軍曹に一番強烈な印象を持つだろう。
(YouTubeでいくらでも映像を見ることができるので、参照されたし。)
まさにこの一役だけで映画史に、いや人々の記憶にハートマンという名を刻んだ、「本名は知らないが映画ファンならほぼ全員が顔を知っている」名優である。
おそらく日本の小学校では、(今でも)夏休みの登校日とかに反戦映画・反戦アニメを子どもたちに見せることが多いのだろうが……
それより『フルメタル・ジャケット』を上映した方が、はるかに戦争や軍隊というものが「恐ろしい」と思わせる効果があるはずだ。
そして『フルメタル・ジャケット』で最も印象的なのは――
兵隊たちはものすごく過酷で厳しい訓練・規律を重ねてきたはずなのに、いざ本物の戦場に出ればけっこうヒマそうでいい加減な風情であることだろう。
昔から本物の戦争とは、
「たまの戦闘の間に続く、どうしようもない退屈との戦いである」
と言われてきたらしい。
だからたぶん『フルメタル・ジャケット』は、そういう本物の戦場(と本物の駐屯地の日々)を描くのに成功しているのだと思われる。
何にせよ、ハートマン軍曹は永遠の名キャラクターである。
バットマンやスーパーマンやロボコップやターミネーターと違い、たった一作の映画に出演しただけで――
それも最後は気の狂った落ちこぼれ兵士(微笑みデブ)に射殺されるという役回りなのに、そのインパクトは歴代のスーパーヒーローたちをも凌ぐ。
アーメイ氏の死去を悼み、今度お家のどこかにあるDVDを探して、もう一度『フルメタル・ジャケット』を見ようと思う。
そして全国の小・中・高校で『フルメタル・ジャケット』を上映することを、今一度提案しておこう。