蛙(カエル)化現象……
ここ数か月くらいで突如世の中に浮上してきたこの言葉、
「今まで自分が好きだった相手が、
ついに自分に振り向いてくれた(プロポーズしてくるとか)途端に、
逆に“気持ち悪い”と感じて冷めてしまう現象」
のことを指すという。
そして、驚くべきことに――と言うべきかどうかわからないが、これが今のZ世代流行語のランキングトップになっている。
(⇒ マイナビニュース 2023年6月6日記事:Z世代流行語ランキング 1位は「蛙化現象」)
それにしても、意味を知れば誰もが「ヒドい話だ」「なんじゃそれ」と感じずにいられない現象である。
今まで大好きで、どうか自分のことを好きになってほしいと――好きになってくれればいいなと念じていた相手が、いざ本当に自分を好きになってくれると冷めるというのだ。
いや、嫌いだとか気持ち悪いとかとまで思ってしまうのだ。
しかもこれが、世の人々の大いなる共感を呼んでいるという。
ということは、それほど多くの人がこんな現象を自分の心で経験しているということらしい。
いやはや、何という恐ろしいことだろう。
それは当然、こんな現象の「相手方」になってしまった人が、この現象に共感する人と同数くらい存在するということでもある。
こんなのたまったもんじゃない、こんなのあまりに恐ろしすぎる、と戦慄するのが普通の人間ではあるまいか。
いやしかし、なぜ現代はこれほどまでに「恋愛離れ」「結婚離れ」そして「少子化」に繋がるような話ばかりが流行るのだろうか。
なぜそういう話に限って、人々の共感を呼ぶのだろうか。
陰謀論者なら、これこそ「闇の世界政府」による人類削減計画の一環である、と大いに主張すべきところだ。
(しかし、これほど多くの陰謀論者・陰謀シンパが世にゴロゴロしているようなのに、こんなことを言う人は全然いないようである。)
今まででさえ恋愛忌避・結婚回避をする理由は、星の数ほどあったというのに……
今度は「蛙化現象」という言葉が普及したからには、ますますZ世代のような恋愛・結婚世代がそれらに対して恐れをなすのは当然である。
蛙化現象を引き起こす心を持っている人は、かなり大勢分布しているようなので……
もし自分に好意を持っていてくれる人がいるとして――それは気のせいではなく、本当にそうなのだが――、じゃあ自分から思い切って「好きです」と伝えたら、途端に気持ち悪がられて嫌いだと思われる。
こんな恐るべき地雷が埋まっていると思えば、どうしてプロポーズなどしていられよう。
どうしてまともな恋愛などに行きつけるなどと、信じられよう。
蛙化現象という現象があり、しかもそれが広汎に存在すると知られてしまった以上、日本人の恋愛へのハードルはまた一段階上がってしまった。
これはもう、日本社会には自らを少子化に誘う「神の見えざる手」が働いているとしか思えないほどである。
そして、おそらくは今日もまた、蛙化現象の「相手方」となってしまった犠牲者たちが、人知れず生まれ続けているのだろうか。
私にはその精神的ダメージは、とても「人知れず」と言うほど小さいとは思えないのだが……