7月9日、闘病中だったジャニーズ事務所創業者でトップのジャニー喜多川氏が死去した。享年87歳。
それを報ずる記事では「裏方に徹した」などと書いてあるものもあるが――
その割にはジャニー喜多川と言えば、ほとんど知らぬ者とてない有名人である。
あいにく私は芸能界とりわけ男性アイドル界には全く興味がないのだが、「最も多くのチャート1位を獲得した歌手をプロデュースした人物」としてギネスブックにも掲載されるほどの超大物プロデューサーだったらしい。
(もっとも私が彼の名前を知っているのは、その同性愛志向のウワサによってだが……)
テレビも新聞も、まるで「天皇陛下崩御」のような分量で彼の死を伝えたようだが――
しかしおそらく、日本人の半分くらいはこのニュースに無関心だったと思われる。
「ジャニー喜多川が死んだんだって」と職場や家庭で話をする人って、あなたの周りにそんなにいただろうか?
しかし、にもかかわらずと言うべきか――
彼の死を伝えるテレビ番組では、ジャニーズ所属や所縁のタレントのみならず、アナウンサーやその他ゲストまで「喪服(黒系の服)」を着ていたとしてやや話題になっている。
特に日本テレビの『スッキリ!』は喪服率が高かったらしい。
たぶんこれを聞いたほとんどの人は、
「テレビ局って、ホントにジャニーズ事務所に“忖度”してるよな」
と思うに違いない。
だが、これは当たり前と言えば当たり前のことだろう。
テレビ局とは要するに、公正中立な特別機関であるわけはなく――
(言うまでもないことだが、)「放送業者」「報道業者」であるに決まっている。
ジャニーズ事務所は、その報道業者のいわば大口取引先である。お世話になっている会社である。
そのお世話になっている会社の会長が死去したのだから、それは「配慮」も「忖度」もするだろう。喪服の一着くらい着るだろう。
番組に出るゲストもそれくらい「忖度」するだろうし、そうするのをテレビ局に求められる/ほのめかされるのも別におかしくない話だ。
よくテレビ局も新聞社も「偏向している」なんて批判されるが――
おそらくそれは、「公共的な立場にありながら、偏った見方をするのは許されない」という、一種の「勘違い」に基づくのだろう。
テレビ局(NHKは除くが)も新聞社も、当然ながら民間営利会社である。
とどのつまりは「業者」である。
そう考えると――本当は、そうとしか考えられないはずなのだが――、別に新聞社やテレビ局が偏向していようと「特定の誰かに配慮」していようと、
そりゃそんなもんだろう、と軽く受け止めることができるだろう。
テレビや新聞が言っていることは、「業者」の言うことだと思う――
そう考えれば、世の中はずいぶんスッキリするのではなかろうか。