プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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森友学園と街宣右翼、「真の逆賊は誰なのか?」

 森友学園の運営する塚本幼稚園についてのニュースを、NHKのネット動画で見た。

 それは民進党議員が本日国会質問したときのネタになったもので、幼稚園の昨年の運動会を映したものであった。

 選手宣誓で幼稚園児の男子女子4人が右手を挙げ、

「安倍首相頑張れ、安保法制、国会通過よかったです。日本頑張れ、エイエイオー」

 と唱和している。

 またこの映像にはなかったが、

「日本を悪者として扱う中国、韓国が心を改め、歴史でウソを教えないようお願いします」  

 とも唱和させていたとのこと。


 幼稚園児の可愛い声で言えばどんなことを言おうとも可愛く聞こえる、というのは確かにそうだ。

 しかしこれ、さすがに安倍首相自身もビックラこいたのではなかったかと思う。

 そして私は、「うーむ、キモい、キモ過ぎる」と思わざるを得なかった。

 ここまで行くと、そんじょそこらの宗教団体も顔負けのカルトぶりである。

 幼稚園児に「安保法制国会通過よかったです」と言いましょうと指導するなど、いったいどういう感性からそんな発想が出てくるのだろう。

 この子たちの親御さん、いかに「そういう幼稚園だと知ってて」子どもを入園させたのだとしても、本当にこんな光景を見てニコニコしたりジーンときたりしてるのだろうか?

 確か産経新聞社から出ていた本だと記憶しているが、1970年代の中国の「紅衛兵」(こうえいへい)について述べた節で――

「年端もいかない子どもに政治的活動・発言をさせる連中に、ロクなのがいない」との意味の文章があった。

 私はこれに、全く同意するものである。

 重ねて言うが、「日本頑張れエイエイオー」は措くとして、「安保法制国会通過よかったです」などと運動会の選手宣誓のとき幼稚園児に言わせるなんて、とてもまともな日本人の発想とも思えない。

 一応フォローしておくと、NHKネット動画で見る籠池泰典理事長は、別にそんなにトチ狂った変人のようには見えなかった。

 ごく普通の常識人のように落ち着いた口調で、いかにも良識ある教育者然としている……と言えばそうである。

 しかしやはり、人間、外見だけでは判断できない。 

 この人が幼稚園児に「安保法制国会通過よかったです」と言わせているのだから、全く世の中、油断も隙もあったものではない。

 それにしてもこの人、どうしてこんなにも安倍首相に傾倒しているのだろうか。 

 幼稚園児にあんなこと言わすなんて、よっぽどの安倍首相支持者や安保法制支持者でもドン引く人が多いだろうに……

 そして――

 安倍首相に対してさえもこうなのだから、天皇誕生日や昭和の日など、いったいどんな儀式が行われているのかと興味を持つのは不謹慎だろうか?


 籠池理事長は(このたびの一連の報道のこともあり)生徒集めに苦戦しているのを認めているらしいが、それも当然のことである。

 こんなことさせる幼稚園・小学校に我が子を入園させようなんて、よっぽど奇特な父兄だろう。

 たぶん本件に関して今なお森友学園を擁護する人たちも、いざ自分自身の子のこととなると――

 たとえこの幼稚園や小学校が自宅のすぐ近くにあったとしても、行かせるつもりはサラサラないものと思われる。


 また世間一般について言うなら、太平洋戦争敗戦からずっと続く「国民の通念」が、本件によってまたしても固まってしまったと言えるだろう。

 その国民の通念とは、「天皇陛下万歳とか愛国とか声高に唱える奴は、コワくてロクなもんじゃない」というものである。

 私は子どものことから思ってきたが、あの街中をデカい黒い車で軍歌を大音量で流しながら走る、街宣右翼――

 あれを見て「おお、頑張ってる頑張ってる。自分も天皇陛下のため国のため命を捧げたい」などと感じる人が、はたして一人でもいるのだろうか?
 
 もちろんあれを見る人・聞く人は、「またロクでもないヤクザみたいな連中が走ってる」としか思うはずがないのである。

 はっきり言って彼らは、天皇とか愛国心というものに対する国民感情を、何十年にもわたって悪化させてきたと思う。

 「やっぱり愛国とか天皇とかはヤバいものだ」という心を、ずっと育んできたと思う。

 その意味で彼らこそ、とんでもない逆賊であり国賊だと言うべきではないだろうか?

 たぶん“まっとうな”愛国者天皇崇敬者は、ずっと彼らのことを苦々しく思ってきたことだろう。

(もしかしたら天皇陛下はじめ皇族方も、彼らのことを迷惑がっておられるかもしれない。)


 そして今回の森友学園もまた、「やっぱり“右翼”はロクなもんじゃない」との国民の通念を固めさせる役に立った。

 むろん安倍首相が、本件のことを迷惑がっているのは疑いない。

 なんだか、あえて安倍首相に同情的な表現をすると、「おかしなファンにつきまとわれたアイドル」のように見えるのである。


 先日の記事にも書いたが、私は森友学園のような教育で培養された「愛国者」が、真の愛国者とは思わない。

 そりゃ子どもの頃からこんな教育をしていれば、愛国者になるに決まっているのである。

 だからどうしたというのだろう、何の感銘があるのだろう。

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 
 
 愛国心に限ったことではないが、思想も信条も学識も、自分の意志で選び取ったり作り出したりするものである。

 「子どもの頃から愛国教育を受けてきたから愛国者になりました」って、そんな胸を張って言うようなことか?

 そんなのを作り出したからって、誇りとするようなことなのか?

 
 ここに至ってなお、森友学園の教育方針を弁護する人に聞いてみたいが――

 あなたはもし「憲法九条を暗唱させる」幼稚園があったら、どう思いますか?

 それは「トンデモ幼稚園」で「カルト」だと、直ちにネットに書き込むのではありませんか?

 むろん私もこんな教育で培養された子どもたちを、「インチキ平和主義者」だと思う。カルト宗教の犠牲者だと思う。
  
 それをただベクトルが真反対というだけで森友学園を弁護するのは、当たり前に理にかなっていない。

 「憲法九条暗唱幼稚園」がカルトなら、「安保法制国会通過よかったです唱和幼稚園」もまたカルトと見なすべきである。

 前者がインチキ平和主義者養成施設なら、後者はインチキ愛国者養成施設と見なして然るべきである。


 そして街宣右翼たちも、軍歌を流して街を車で走るよりは――

 駅前のゴミ拾いでもした方がよっぽど国民の支持と天皇陛下への敬愛の念を得られるだろうに、いつになったらそういうことをするのだろうか?

(もしかして、やっている団体があったら申し訳ないが)