プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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スピッツ「さん」付けと「繁文縟礼化」の歴史法則

 ミュージックステーションで、スピッツと共演した上白石萌歌スピッツを呼ぶとき「さん」を付けなかったことが、ネット上で議論(と言うより感想書き込み)になったという。

gendai.ismedia.jp



 この、集団や法人を「さん」付けで呼ぶこと――

 それが敬意の表れであり、そうしなければ無礼であり不快であるというのもまた、現代日本の「礼式」となって久しい。

 みんなが口を開けば「~させていただく」となったのも、そう言わなければ不快だという人がいるからである。

 一人でもそういう人がいると、みんなそれに合わせるようになるものである。

 たとえ自分は違和感があろうとも、一人からでもそれに文句を言われるのは嫌だからである。

 みんな思っているように、「敬意」と「配慮」こそ今の日本の「正しい道徳」であり、かつ「集団的自己規制」なのだ。

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 さて、歴史には法則があるとしばしば言われるが……

 中でも絶対確実だと自信を持って言える法則が、二つある。

 一つは、「全ての国家(政体)は滅亡する」というものである。

 もう一つは、「全ての国は、長く続くと繁文縟礼化する」というものである。

 長く、と言っても100年もいらない。

 50年いや30年も続けば、充分に繁文縟礼が定着する。

 ちょっとした文章や言葉遣いが大問題になり糾弾される社会になるのは、何も現代に始まったことではない。

 草原の騎馬民族が作った国も、
 
 半農半猟の非文明人(扱いされた人たち)が征服した国も、

 ちょっと長く続けばすぐ繁文縟礼化するものである。

 日本で有名なのは朝鮮王朝(李氏朝鮮)の両班(やんばん)貴族らだが――

 この民主化された世界では、貴族のみならず国民全体が繁文縟礼化するのも当然の成り行きだろう。

 
 もちろん繁文縟礼化したとされる国の人々は、自分たちが繁文縟礼化の中にいるとは思わない。

 思ったとしても、それが悪いとはあまり感じない。

 むしろそれは自分たちの社会が「配慮」を大事にする文化を進展させたという「文明化」の証であり、当然「良いこと」だと感じていたはずである。

 いくら後世から見れば、それは「柔弱化」に他ならないとしても……

 しかしそういう国が滅んだのを知る後世もまた、自ら進んで繁文縟礼化の中に入る。

 それが良いことだとして推し進めていく。

 もし日本にこれからも平和が続くなら、繁文縟礼化は(形は変えながら)ますます進むのではなかろうか。

 しかしいつかは平和も終わり、また次の平和が訪れ、歴史は何度でも繰り返すだろう……

 

自民党選挙3連敗と「東京五輪と共に死す」の奈落

 4月25日、次期衆院選の重要な前哨戦と言われる3つの選挙に、自民党が全敗した。

 ①衆議院の北海道2区補選、

 ②参議院の長野選挙区補選、

 ③参議院広島県再選挙。


 このうち①は候補者すら立てずに不戦敗、

 ②は立憲民主党の「羽田王国」を崩せずに敗北、

 ③は自民党の元官僚がフリーアナウンサー女性に敗北した。

 さて、①は論外として――

 ②の「羽田王国」すなわち世襲議員制の側が勝つというのは、それはそれでどうかと思う。

 しかし言うまでもなく自民党側にも世襲議員制は掃いて捨てるほど根付いているので、この点どっちもどっちである。

 ③については、例の河合案里(とその夫で元法務大臣!の河井克行)の選挙買収事件で再選挙となったものだが、むろん自民党には大逆風が予想されていた。

 こう考えてみると、この3連敗は十分に予想の範囲内だったはずではある。

 だが自民党にとって、③だけは「絶対に負けられない戦い」であり「それでも勝てる戦い」だったはずだった。

 広島県は(被爆地であり左翼が強いのかと思いきや)、日本に冠たる「保守王国」であるからだ。

 そして結果的に、フリーアナウンサーの宮口治子(はるこ)氏(45歳)と元官僚の西田英範(39歳)氏の得票差は、ごくわずかな接戦であった。

 ついでに言えば、投票率は22%程度と、なんと3割にも届かない率であった。


 これは自民党にとって、2つのことを意味している。

 一つは、いつもなら自民党に投票するはずだった相当数の人たちが――

 「さすがに今回は自民党には入れられない。しかし、だからと言って、他の誰にも入れる気にならない」

 と考えたに違いないことである。

 つまり保守王国は、まだ死んだわけではない。

 それこそ「ほとぼりが冷めれば」、また自民党議席を奪回する可能性は充分である。

 そしてもう一つは、自民党には――

 「自民党が何をやっても、とにかくひたすら自民党にだけ投票する」という人たちが、まだまだたくさんいることである。

 これは安倍首相が言っていた日本の「岩盤規制」になぞらえれば、「岩盤支持層」と言ってよかろう。

 こういうのを持たない、あるいは持っていても規模の小さい野党にとっては、この岩盤支持層はうらやましい限りだろう。

 しかしむろん、この岩盤支持層というのはイコール高齢者のことである。

 これから次第に、数を減らしていく人たちである。

 野党にとっては、近未来の高齢者たちを「とにかく自民党だけはダメだ」とする「反自民岩盤層」を作っていくことが、最大の課題であり効果的な策となるはずだ。


 ところでこの広島決戦に自民党が候補に立てたのは、39歳の元官僚であった。

 私など「元官僚」というだけで民衆の脊髄反射的な反感を買うのではないかと危ぶむのだが――

 それは自民党もそう思うのかどうか、とにかく年齢は39歳という「若いの」を選んだ。

 しかし私見では、「若さ」と「元官僚」というのは、相性が悪いと思うのである。

 若いのを立てるなら、官僚なんかやったことがない民間人を選ぶべきだと思うのである。

 それでもあえて元官僚を立てるなら、それこそ影響力のあるパイプになりそうな(定年退職したくらいの)年配者を立てるべきではあるまいか。

 なんだか今回、自民党は「二兎を追う者は一兎をも得ず」を地で行った気がしないでもない。


 さて、しかし本番は――つまり衆院選は――今からである。

 思うに自民党は、その本番でこそ大敗北を喫するのではなかろうか。

 その最大の要因は(今までこのブログでも何度も言ってきたが)、むろん「東京オリンピックの強行」である。

 コロナ対策が不十分だとか後手後手の行き当たりばったりだとかは、まだしもである。

 こんな事態は今まで誰も経験したことがないのだから、まだしも国民はこれを天災として理解するのかもしれない。

 しかし「それでも、こんな状況でも」オリンピックをやるとなれば、これはもう自爆的人災としか見えないだろう。

 私には、これが見えないほど自民党が愚か者集団だとは思わない。

 だが歴史上よくあるように、誰にでも見える破滅の道を驀進していく集団というのは、けっこう実在するのである。


 自民党は、オリンピックと共に自爆する。

 しかし自民党には、何があっても投票してくれる岩盤支持層がある。

 いったんは野党が政権を取り、それをまたしばらくして自民党が奪還するという、

 最近もあったような展開が、また繰り返される可能性は濃厚である。

 

「ドバイ詐欺」をあなたは心底笑えるか-ロマンス詐欺はいまだ死なず

 「ドバイ詐欺」というものが、近年急増しているらしい。

 ドバイと言えば、今の日本において「金持ち・華やか」のイメージとイコールで結ばれる地名である。
 
 ドバイは国でなくアラブ首長国連邦UAE)の一都市なのだが、しかし日本人にとっては、アラブ首長国連邦よりも身近で知名度のある名前でもある。

 ずっと前から「石油成金」として著名だったサウジアラビアは別として――

 中東の都市の名を聞いて「超金持ち」と打てば響くように日本人が連想するようになったのだから、これだけで「時代は変わった」と感じるには充分な気がする。

 だからなるほど、詐欺で掲げる名前としてはドバイはうってつけなのだろう。

(⇒ 毎日新聞 2021年4月24日記事:「あなたと同姓の富豪が死んだ」 周到な「ドバイ詐欺」相次ぐ)

 
(⇒ 在ドバイ日本国総領事館:詐欺被害防止のために~資料編~)


 在ドバイ日本総領事館によると、ドバイ詐欺には大きく4種類ある。

「金融機関を騙る」

「王族や政府を騙る」

「高利益の商取引を提示する」

「ロマンス(遠距離恋愛)を演じる」

 ……このうち「金融機関」と「高利益」はともかくとして、「王族」「ロマンス」ともなると、

「こんなの引っかかる奴がホントにいるんだ」

 と、被害者の方をバカにする人が大半だろう。

 まさに「ダマされる方が悪い」と感じる方が、むしろ一般的だろう。

 ロマンス詐欺と言えば、その日本における最高傑作は「クヒオ大佐事件」である。

 詳細は省くが、この男はアメリカ海軍の軍人クヒオ大佐を名乗り、日本人女性をロマンス詐欺に引っかけた。

 なんと「今、ジェット戦闘機の中から電話してる!」などと言ったこともあるらしい。

 これでまだダマされるんだから、被害者はよっぽどバカに違いない……

 と、普通の人は普通に思う。


 だが、である。

 日本でも日々オレオレ詐欺とかなりすまし詐欺とか、色んな種類の詐欺話にダマされている人は実在する。

 その人たちもほぼ全員が、「そんな詐欺」にダマされる人をバカにしていたに違いない。

 だから私も、そしてあなたも、いざ自分が詐欺のターゲットになったとしたら、まさにそのバカになってダマされてしまう可能性は非常に高いと思っている。

 これは交通事故に似ていて、「なんでこんな所で事故を起こすのか?」と不思議に思うような場所で、実際に事故は起こっているものである。

(たぶんあなたも、そういう所で単独事故くらいは起こしたことがあるのではないか?)


 人は、ウマい話にダマされるものである。

 どんなにそういう詐欺話のことを聞いたことがあっても、いざ自分が「主人公」になると、いとも簡単に「これは本当かもしれない、こんなチャンスを逃したら一生後悔する」と思ってしまうものである。

 これを自制できる人は、きっと思ったよりも数が少ない。

 
 そう、「自分だけは(こんなバカな話に)引っかからない」と確信するのは――

 ちょうど中学生が、「学校にテロリストが乱入してきても、自分が活躍して撃退する」ことを夢想しがち?なのと共通するものがあるかもしれない。

 その中学生は、ものすごく高い確率で活躍できない。

 活躍どころか逃げることさえ怖くてできず、みんなと一緒に這いつくばってガタガタ震えて心臓がドキドキするのがオチである。

 しかしそれがわかっていても、人間は「テロリストを撃退する自分、そうでなくても上手くやる自分」を想像せずにはいられない。 

 そう思えば、「紛争地域で孤独に任務に従事する(ニセ)軍人」とロマンスに陥って送金する女性のことを、笑ってばかりはいられないだろう……