プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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歌手Toshi「観客1名のみ」コンサート熱唱-逆転の発想で「良い売名」

 9月22日、歌手のToshi(54歳)が、東京オペラシティにおいて「観客1名のみ」のコンサートを開催した。

 正確に言うとコンサートは4部制で各30分、各部1名(第4部のみペア2組)を招待。

 これには1万人以上の応募があったらしく、もちろん全員がToshiのファンだろうから、まさに当選者には夢のような空間である。

 特筆すべきは、それでもこの料金が1人3万円であること。

 入札形式にすれば少なくとも10万円くらいにはなっていただろうから、ほとんどチャリティ興行のようなものである。

 いや、Toshi自身「採算度外視」と言い切っているから、(今の東京オペラシティの使用料がタダみたいなものだとしても)まさにチャリティに他ならない。

(⇒ スポーツ報知 2020年9月22日記事:Toshi、観客1人に熱唱。採算度外視も「『今だからできない』じゃなく『今だからできる』こと」)


 たぶんこの「観客一人コンサート」で、Toshiは株を上げただろう。

 そして、追随する歌手らも出てくるだろう。

(そして彼らは、入札形式にしにくくなるだろう。)


 もちろん意地の悪い人は、こんなことでも「売名」と捉えるものだ。

 あるいはまた、「カネがある人だからこそこんなことができる」と感じるものだ。

 なるほど、後者の意見には――「コロナ以前に名声を得ていた人だからこそ、こんなことができる。やったらニュースになる」という意見には――確かに一理ある。

 しかし前者の「売名」批判というのは、説得力がないことおびただしい。

 売名がダメだというなら、広告もプロモーションも、この世の会社がやっていることは全てダメである。

 というか、企業の活動の柱は、売名することである。

 売名批判をやっている人だって、その大半はどこかの企業に勤めているだろうから、売名に加担しながら売名を批判するようなものだ。


 別に「良い戦争」と「悪い戦争」がある、と言いたいわけではないが――

 この世には「良い売名」と「悪い売名」がある、ということくらいは言っていい。

(悪い売名というのは、YouTuberの悪ふざけが典型例である。)


 今回の一人コンサートは、文句の付けようがない「良い売名」である。

(ムリに売名に結びつけようとするのなら、だが。)


 確かにこれは逆転の発想で、「誰でも考えつく」ことではあるが、しかしたいていの人はやらない行為である。

 そして、蛇足だが……

 「ルーブル美術館を8時間1人きりで鑑賞できる」

 権利を入札形式にすれば、どれだけの値段が付くだろう――

 などと、下世話な私などはやっぱり思ってしまうわけである。