広島県が地盤である、河井克行・河井案里国会議員夫妻の選挙買収(公職選挙法違反)事件。
これについて、今まで夫妻からカネを受け取っていたことを否定していた広島県三原市長の天満祥典(よしのり)氏が――
6月25日に会見を開き、一転して受け取っていたことを認め、30日付で辞職すると発表した。
その前に同じく広島県安芸太田町の町長も受け取っていたことを認め、4月には既に辞職している。
また、広島県議会議員で元議長である奥原信也氏も、受け取っていたことを認めた。
現時点で個人への金額がわかっているのをリストアップすると、次のとおりである。
●奥原県議 200万円
●三原市長 150万円
●安芸高田市長 60万円
●安芸太田町長 20万円
●石橋・広島市議会議員 30万円
●繁政・府中町議会議員 30万円
さて、みなさん、どう思っただろうか。
私が直感的に思ったのは、「国会議員選挙の買収費って、こんなに安いのか?」ということである。
特に安芸太田町長の「20万円」というのは、いささか涙さえ誘う。
言っちゃ悪いが、こんなハシタ金を渡す方もどうかしている、と感じるのは不謹慎であろうか。
私だったら「バカにするな」と怒り出してしまいそうだが――
こんな金額で(たとえ村議会選挙でさえ)選挙協力してくれと言われても、する気にならないのが普通の人間ではあるまいか。
そしてもう一つ思うのが……
この受け取った人たちは、本当に河井夫妻のために何かしたのだろうか。動いたとしたら、どんな動きをしたのだろうか。
私だったら、受け取っても何もしなさそうである。
何もしなくても、どうせバレはしないのだから。
カネをもらっても、「バ~カ」と思いながら別の候補者の名前を書けばいいのだから。
(そう、選挙買収というのは、逆説的だが「信義を大事にする」ことで成り立っている犯罪である。)
「先生こらえてください、これ以上のことは、と何回も固辞をした。
しかし、それでも預かってくれ、ということだったので、二人の秘密、ということで理解をした。
国会議員の先生を信用していたので受け取ったし、秘密は守り通そうとも思った」と述べている。
奥原県議は、「河井克行議員が勝手に持って来たが、票のとりまとめは依頼されていない」と言っている。
石橋広島市議は、今回に限らず過去にも「収支報告書に記載する義務はないから」と、10万円をカバンにねじ込まれたこともあった、と述べている。
繁政府中町議は、カネを渡されたとき「安倍総理から」と言われたという。
この人たちを別に弁護するわけではないが、
確かにこういう「押し売り」(いや、「協力の押し買い」と言った方がいいか)をされると、断り切れないのがむしろ普通の人間という気がする。
たいていの人は人生に一度くらい、もらいたくないのに「ぜひもらってくれ」と押しまくられ――
相手の気を悪くするのを恐れ(それこそ「配慮」だ)、もらってしまうことがあるのではなかろうか。
いや、それにしても、いくら過疎の市・町とはいえ、
町長が20万円で市長が60万円である。
これが国政選挙の標準的な買収相場なのだとしたら……
我々が思うより、「票の値段」というのはずっと安いものなのだろうか。