いま欧米で、「文化大革命」が盛んである。
アメリカで黒人のジョージ・フロイド氏が白人警察官に「首を絞められて殺された」事件を発端に――
「人種差別者・助長者」と見なされた(歴史上の)人物の銅像が撤去されたり破壊されたり、
美白効果を謳う化粧品が「白い肌が良いものだという刷り込みを与えている」として販売中止になったり、
まさに「黒い旋風」が欧米中を吹き荒れている。
これはまさに、かつて毛沢東時代の中国で起こった「文化大革命」を彷彿させる。
本場の文化大革命のスローガンは「造反有理、革命無罪」であった。
「既存文化への造反には理が有る、青年たちの革命行為は無罪である」
という意味であるが……
今回の欧米での文化大革命ではさしずめ「反人種差別有理、運動無罪」とでもなろうか。
もちろん本場の文化大革命は、今ではほとんど誰も「あれは良いことだった」と言いはしない。
知識人や青年を地方に「外放」させたり、
自宅裏庭の自家製溶鉱炉で製鉄させたり(むろん使い物にならない品質だった)、
悪名高い 「紅衛兵」(紅=赤=共産主義を護る兵士)が猛威を振るったり……
それらをひっくるめて皆、20世紀最大級の国家的バカ運動だったと見なされている。
しかしむろん当時の中国では、それが正義だった。
こんなことは間違っていると言うのはもちろん、ちょっと行き過ぎなんじゃないのと疑問を呈することさえ、危険極まる反逆行為だったのだ。
そして今の欧米文化大革命でも、やはり「それはちょっと行き過ぎでは?」などと言ってしまえば、
たちまち紅衛兵ならぬ黒衛兵に社会的リンチに遭わされてしまいそうである。
おそらく欧米人以外、それこそ日本人などにとっては――
と感じる人が多いのではないか。
さすが、かの世界的に有名な「魔女狩り」をやった欧米人だけはある、とも感じたのではなかろうか。
そう、おそらく地球は未だ、「土人の惑星」なのだろう。
あるいは見方を変えれば、いよいよ欧米は中国の後追いを始めた、とも取れる。
中国が毛沢東時代にとっくに経過してきたことを、2020年の今になってようやく欧米はやり始めた、と見ることもできる。
さて、しかしここで書こうと思うのは、「人の銅像を建てるのはもう止めよ」というものである。
ここ1ヶ月の間で、銅像が撤去されたか撤去を求める声が上がっているのをピックアップしてみると、次のとおり。
(むろん、全部ではない。)
●クリストファー・コロンブス(アメリカ大陸到達者)
●ウィンストン・チャーチル(第二次大戦時のイギリス首相)
●レオポルド2世(コンゴ(ザイール)を私有財産としたベルギー国王)
●トーマス・ジェファーソン(アメリカ初期の大統領)
●セオドア・ルーズベルト(「棍棒外交」で有名なアメリカ大統領)
もしこういう欧米のムーブメントが、日本に波及すれば――
たとえば豊臣秀吉という朝鮮侵略者の銅像など、真っ先に撤去の標的になるだろう。
織田信長や伊達政宗などの戦国大名、すなわち必ずや残酷な虐殺をやってきた(とわかっている)人物の銅像も、また同じである。
そしてつくづく思うのだが、もう(実在の)人間の銅像を建てるのは止めるべきである。
いかなる人間も悪の部分や闇の部分があり、それが明らかになったから・広く知られるようになったから倒す、というのは、実に無駄なことである。
そんなことなら、初めから建てなければいいのである。
ひょっとしたらジョージ・フロイド氏の銅像も建つのかもしれないが、そんなことはしない方が良い、と(全くの部外者ながら)忠告しておきたいところだ。
(みんな知っていると思うが、彼は犯罪歴多数である。)
約束は破るためにある、とか言われるが、「銅像は倒されるためにある」という方が、より真実に近い。
中央アジアあたりの独裁大統領らが決まって作りたがる自分の銅像も、いつか倒されてしまうだろう。
「偉人」の銅像を建てる風習から、人類はもういいかげん脱却すべきである。
たいていの人間は、ロクなもんじゃない面を持っているものである。