5月8日、セゾン自動車火災保険は、「日本人の約4割が電話恐怖症」だという調査結果を発表した。
あなたはこの結果を、どう思うだろうか。
私は正直、「こんなに少ないはずがない」と思う。
これは、個人的な見積もりに過ぎないが――
「働く日本人の9割は、電話恐怖症と言うより電話嫌悪症」ではないかとさえ感じる。
これは、あなた自身に置き換えてみればわかるだろう。
あなたは電話を、特に「お客様からの電話」を取るのが好きか?
「できれば取りたくない」などと思っていないと、本当に心の底から誓えるか?
最近の新入社員は電話に出ることを嫌がる・怖がるとは、ネットでもちょくちょく見るところである。
そしてまた、電話とは「相手の時間を勝手に奪う迷惑行為」だとも、ちょくちょく見るところである。
これは、相当の確信を持って言えるのだが……
あなたが男性であるとして、
「お客様の電話を取る」仕事に就くよりは、むしろ炭鉱夫をした方がいい、
と心から感じる人は、相当数に上るのではあるまいか。
最近の男性は出世欲がない、ともよく言われるが、しかし――
「早く電話対応しなくていい部署に行きたい、そういう身分になりたい」
とは、大勢の人が思っているのではあるまいか。
なぜ電話が嫌いか・怖いか、の理由として、今回のアンケート調査では「雑な対応をされるのが嫌」だから、ということになっている。
しかし、「なぜ電話を取るのが嫌いか・怖いか」となれば、これはもう「変なヤツ・めんどくさいヤツに当たるのが嫌」だから、ということに決まっている。
実際、日本の職場におけるストレスの最上位は、この「変なヤツ・めんどくさいヤツとの電話対応」ということになるはずである。
(たぶん、あなたもこれに当てはまる。)
さてそうなると、すぐに思いつくことがある。
それは、「あなたは電話対応しなくていい」として人材を募集すれば、さぞ多くの優秀な人たちが競って応募するだろう、ということである。
あるいはまた、「当社においては、電話対応自体を廃止する」と公言すれば、やはり多くの優秀な人材が集まってくるだろう、ということである。
電話対応を嫌がる人間なんか、優秀ではない。
いや、優秀ではあったとしても、使い物にはならない。
電話対応しないような会社は、ろくな会社じゃないから相手にされない……
と、すぐに反論されそうではあるが、しかしそれこそタワゴトというものである。
世の中には、「電話対応させられるのは嫌」と思っている優秀な人たちが、それこそゴマンと転がっているのだ。
(くどいようだが、あなたもその一人かもしれない。)
そして実際に、電話対応を廃止して業績を上げた会社というのも存在する。
いや、もっと身近な例で言えば、現に――
ネット関連企業の多くは、顧客対応は電話廃止でメールのみにしているではないか?
きっと近未来には、いや今でも既に、「電話対応しなくちゃいけない会社は、ブラック企業」というイメージが世の労働者には広まっているだろう。
いまだに電話対応していることが、「遅れたブラック企業の象徴」とされる日が来るだろう。
そしてもちろん、電話対応を残さざるを得ない業種や職種は、おしなべて「賤業」と見なされる日が来る。
お客様の電話を受けるホワイトカラーは蔑視され、そんなことしなくていい屋外労働者の方が「高貴な仕事」と羨ましがられることになる。
今現在のホワイトカラーでさえ、地位の高さは「電話対応からの遠さ」で測られている、と言っても過言ではない。
今後の予言をまとめてみると、
●電話対応を廃止できない会社や組織は、優秀な人材を集めにくくなる。(それこそ電話を嫌悪されるから)
●同時に、世の人々から「賤業」視されるリスクを抱える。
ということになろうか。
おそらく「電話対応」は、日本の労働者のメンタルヘルスを損なっている最大級の要因である。
これを無くさずして何が「健康経営」か「従業員重視」か、と言ってしまってもいいほどである。
電話がなくなれば(メール類似のやりとりだけになれば)、日本人労働者のストレスは大幅な減少を見るだろう。
だから、この方向に進む企業は、大きな社会貢献をしていると胸を張ってもよいのだろう。