4月21日、広島県の湯崎英彦知事は、国民一人一人に10万円ずつ配布されるコロナ給付金10万円について――
県職員に給付される分は基金に積み立てて「コロナ対策の財源に充てる」考えを記者会見で表明した。
(⇒ 中国新聞デジタル 2020年4月21日記事:【速報】県職員の10万円でコロナ対策 広島知事、国給付の活用表明)
案の定というか、ネットニュースのコメント欄は「批判の嵐」である。
個人に給付されるものを(それも消費回復のための意味も多分にあるものを)、
公務員だからといって勝手に取り上げるなんてヒドい、という批判だ。
そしてこれは別に、広島県職員だけが書き込んでいるのでもないようである。
さてしかし、皆さんは疑問に思わなかっただろうか。
こんなことを表明すればこんな批判を受けることぐらい、当然ながらバカではない広島県知事が予想しなかったはずはない。
しかも、それよりもっと「受け入れられやすい」「誰でも考えつく」手段があるのに、である。
それは、直近の6月に支給される公務員ボーナスを「10万円減額」することである。
思うに全国の公務員の過半数は、そういうことが行われるのを予想しているのではなかろうか。
これだけ全国的な自粛が続いて、飲食店や旅行業やホテル業や何やかや、多くの国民が収入低下に苦しんでいるとき、
今のところそういう影響が全然ない公務員が、普段どおりのボーナスをもらう……
これにはさすがに、公務員自身が「それでいいのか」と思うのが普通である。
(一般国民は、言うまでもない。)
だから、「6月のボーナスは10万円減とする」旨を表明しても、このたびの表明ほど激しい批判はなかったに違いない。
それは「給付金10万円を召し上げる」のと同じことかもしれないが、世間の納得度は段違いに違うというのは、わかりきったことではあるまいか。
にもかかわらず、広島県知事が「給付金10万円は召し上げで」と表明した理由は――
おそらくは、「功名心」によるものだろう。
大阪府の吉村知事などがネットで好評を得ている中、全国の知事さんたちには、きっとこういう功名心が……
思い切った政策を「いち早く全国に先駆けて」表明したい、そうして自分の評価を上げたい、という功名心が、必ずやあるはずである。
それはいちがいに、批判はできない。
もしあなたがどこかの知事であれば、ほぼ必ずやそういう心が芽生えるはずである。
知事という政治家だけでなく、研究の虫のような学者の中にさえ、誰にでも功名心はあるものである。
(⇒ 2017年3月20日記事:「鎖国」と「聖徳太子」の復活-歴史学者の功名心について)
たぶん広島県知事は、「いち早く」政策を発表したかったのである。
6月のボーナスを減額するには条例改正が必要(のはず)なので、そんなことを要する政策は(すぐ思いつくはずなのに)言いたくなかったのである。
しかし、私は予想するが――
たぶん公務員は国家・地方とも、6月のボーナスは臨時減額になるのではなかろうか。