図らずも有名人2人が、全く同日に同じ薬物絡みでダブル逮捕されたのである。
このうち国母氏については、別にそんなに意外に思わない人が多いのではないかと思う。
(この人のことを覚えていれば、だが……)
彼のいわゆる「素行の悪さ」は、バンクーバーオリンピック(2010年)の時から知られていた。
ドレッドヘア・鼻ピアス・腰パン姿で会見に出て批判されると、「ちっ、うるせーなぁ。反省してま~す」(東スポWebの書き方による)と捨て台詞を吐いてまた物議を醸したことがあるからである。
しかし彼、何でも今でも年収は1億円近くあるそうだ。
それも日本よりアメリカ中心に活動しているようで……
なんだかオリンピックの会見にレッドヘア・鼻ピアス・腰パンで出るような「若き金持ち」の生態としては、ありそうな話だと感じるのである。
だが田代まさし氏の方は、それよりもはるかに深刻だ。
もう彼が逮捕されるのは、周期的な出来事になってしまっている。
思うに、いかに犯罪者を憎み薬物を憎む人間であっても――
さすがに彼の場合は「累重犯罪者」と言うより「依存症患者」と呼んだ方が正しい、と感じるのではないか。
実際「田代まさし」という名は、日本で最も知られる麻薬患者の名となった。
ある意味、「ダメ、ゼッタイ。」式の薬物使用禁止標語より、はるかに世間の人間に薬物の恐ろしさを伝える役割を担っている。
今はもう死語に近いが、「覗き魔」を意味する「出歯亀」という言葉があった。
これは明治時代に強姦殺人で逮捕された「池田亀太郎」という人に由来するのだが――
あるいは将来、「田代まさしになるぞ」が「薬物で人生転落する人になるぞ」という意味に使われそうな勢いである。
おそらく多くの人は、田代まさしをどうしようもない犯罪者だとは思っていない。
それは彼のタレント時代のことを思うからこそかもしれないが……
どちらかというと、むしろ薬物に取り憑かれた哀れな「犠牲者」と思われているように思う。
深刻なのは、もしもそうなら「幼児性愛」も「殺人淫楽」もまたそうでなければつじつまが合わなくなる、となりかねない点だ。
そして大多数の人間が認めたくないことに――
たぶん「幼児性愛」も「殺人淫楽」も、自分の(改心しようとする)力ではどうにもならないという点では、田代まさし氏の薬物依存とほとんど違いがないのである。
これはやはり、大昔から続く人類の大問題の一つ、
「犯罪というものは存在するのか、それは全て病気の一種ではないのか。
だから罰を与えても意味はなく、治療と予防をすべきではないか」
という話に繋がる。
田代まさし氏が逮捕されるたび、本当は我々はそういう問題に向き合わされてしまうのである。