プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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サウジ国営企業がドローン攻撃で原油生産量半減-サウジ王制は21世紀を生き残れない?

 9月14日、サウジアラビアの国営石油企業「サウジアラムコ」の油田がドローンによる攻撃を受け、原油生産量が半減したとサウジ政府が発表した。
 なんでも、(イランの支援を受ける)イエメンのイスラム武装組織フーシ派の仕業らしい。
(そしてフーシ派自身、これが自分たちの攻撃であると声明を出した。)

 もしあなたが「サウジウオッチャー」なら、このフーシ派というのが近年執拗にサウジアラビアへ攻撃を仕掛けているのを知っているだろう。
 そしてまたイランという国が、ヒズボラをはじめとするイスラム圏の「テロ組織」をやたら支援する国だということも知っているだろう。
 かつてフセイン政権のイラクこそ、アルカイダなどテロ組織を支援する国だとアメリカに決めつけられて攻撃・滅亡させられたのだが――
 本当はそういう理由ならアメリカが真っ先に標的にすべきは、むしろイランの方であった。
 そうしなかったのは、ひとえに(語弊があるが)国際政治のアホらしさというものである。 

 それにしても今回の「ドローンによるサウジ油田攻撃」、フーシ派にとっては大戦果である。
 私はサウジアラビアの、しかも政府肝いりの国営企業の油田なんて、対空機銃を初めとする重武装で守られているものと思っていたのだが……
 どうもそうではなく、我々はハリウッドのハイテク兵器・セキュリティ機器の氾濫するアクション映画を見過ぎているのかもしれない。
 詳しい攻撃の状況は知らないが、おそらくはドローンに爆弾を搭載して「特攻」させたものだと思われる。
 こんな格安の費用でサウジ原油生産に大打撃を与えられるのなら、まさにテロリストにうってつけの武器である。
 こんなので名にし負うサウジの原油施設を破壊できるのなら、日本でだってやろうと思えばいくらでもできそうだ。

 ところでサウジアラビアは、よく知られたように「原油で大金持ち」の国である。
 その国が王制であり、王族たちが超大金持ちだというのもよく知られている。
 そしてまた、中東には珍しい?アメリカの緊密な同盟国だということも。
 にもかかわらず、私はサウジアラビアは――つまりサウド家の支配は――、21世紀を生き残れないだろうと感じている。
 結局のところアメリカにとっては、別にサウド家でなくても親米政権でさえあればよい。
 かつ、アメリカは既にイラクを自陣営に変えることができているので、それだけでサウジアラビアの重要性は低下している。
 これで石油の重要性まで(アメリカにとって)さらに低下していけば、ただでさえ敵の多く(かつ、評判もよくはない。イスラム圏だけでなく当のアメリカでも……)積極的に支援する気になれないサウド王家は、ますます立場が危うくなる。
 たぶん21世紀の半ば頃には、本当にそんな風になってしまうのではないか。

 中東においてアメリカが本当に信頼できる(そして離れられない)同盟国は、もちろんイスラエルだけだ。
 そしてイスラエルが滅亡してしまうことにならない限り、サウジアラビアの重要性は今以上には高くならないように思われる。
 つまりヘンな話だが、サウジアラビアの現王制の存続のためには、同じくアメリカの同盟国たるイスラエルが窮地に立つ方がいいのだろう……?