プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「クールジャパン」吉本興業にそもそも国際競争力はあるのか?

 「闇営業」に端を発した吉本興業と所属お笑い芸人らのゴタゴタは、いまだ収束の気配を見せない。

 そして、その吉本興業がいつの間にか「国策企業」「御用企業」になっており、政府(安倍政権?)推進のクールジャパンの一角を担う存在になっていることが、問題視されているとのこと。

gendai.ismedia.jp


 吉本興業が国策企業化しているというのは最近に始まった話だが――

 しかしそれ以前から、お笑い芸人が「企業・セミナーの研修講師」になっているという現象は、かなり普通のものになってきていた。

 それがいつしか、国という公の機関までが、吉本興業をクールジャパン政策の一角に、いや中核の一つに置いていたというわけだ。

吉本興業の会長は、複数の政府委員を務めている。)


 さて、私は吉本興業やお笑い芸人に何の悪意も持っていないが、しかし前々から思っていたことがある。

 それは、そもそも吉本興業に、日本のお笑い芸人に、国際競争力なんてあるのかということである。

 もっと端的に言えば――

 宮迫博之に、松本人志に、明石家さんまに、

 国際競争力なんてあるのか、世界で通用するのかという疑問である。

 この問いに肯定的な答えを返す日本人は、もちろんほとんどいないだろう。

 彼らのお笑い話芸が世界で通用するはずのないことは、誰にだって当たり前にわかることだ。

 これは彼らをけなしているのでは全然なく、お笑い芸人しかもトーク芸人というのは、宿命的にそういうものである。

 お笑いトーク芸人は、決してワールドフェイマスにはなれず――

 ただ一国か、せいぜい同じ言葉の文化圏の中だけのローカルフェイマスにしか、元からなれないものである。

 だいたい日本において、海外のお笑い芸人(「コメディアン」と言った方がいいか?)の知名度なんて、当然ながらゼロに等しい。

 だったら逆に日本のコメディアンの知名度が海外においてゼロだというのも、全く納得のいくことだ。

 だからといって、それが彼らの名折れというわけではもちろんない。

 同じく日本でしか通用しないローカルフェイマスの宿命を持つ仲間に、将棋の棋士などもいるが……

 だからといって、将棋の棋士が値打ちがないというのではないのと同じである。

 
 ただ、世界に通用するはずがないとわかっていながら、お笑い芸人とそれの所属する会社をクールジャパンの中核の一つに据えようとするなど、普通に考えれば実に見込みのないことだ。 
 
 しかし私にもあなたにも、なぜ政府がそんなことをするのかは理解できる。

 なぜかと言えば、お笑い芸人というものが日本の中で、多大な人気と影響力を持っているからである。

 要するに、クールジャパン政策を推進する上で、国内の支持を(ウケを)得られるからである。


 いまや日本においてお笑い芸人は、例の「コミュニケーション能力」というものの模範である。

 どうかすると、現代における知性の象徴でさえある。

 現代日本人の信望を集めるのは、もはや「テレビでよく見る、面白いことを言う人」なのだ。

 私はこれを、嘆かわしい現象とは思わない。

 結局これもまた、他の多くのことと同じく、(政府の誘導などではなく)国民自身が選んだ(というか、そうなった)道である。

 国民自身の心性がそうなっているのだから、誰に文句を言う筋合いもないのである。


 ただ私はやはり、「国際的に通用するはずのない芸を中核事業にしている」企業がクールジャパンの中核に位置し、その複数の委員を務めるというのは、何とも場違いな気がするのだ。

 世界に日本のお笑いトーク芸を広めるとか、その面白さを知ってもらおうとかいうのは――

 およそクールジャパン事業のうち、最も難度の高い挑戦だと言わざるを得ない。

 ハッキリ言えば、およそ見込みはないだろう。

 日本の悪いクセは「外向けの事業においてさえ、内ばっかり見て外は見ない」ことだと、昔から言われているが……

 吉本興業とその芸人が日本で大人気だからクールジャパンの一角に据える、というのは、その最先端の例ではなかろうか。