プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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元農水事務次官のダメ息子殺害は「同情の嵐」とネットニュースは書くべきでは/「ハズレくじ」問題の時代

 6月1日、元農林水産省事務次官(中央官僚のトップ)を務めた76歳の父親が――

 引きこもりでネットゲーマー、家庭内暴力者でもあったという44歳の息子を殺害して逮捕された。

 何でもこの息子、ネット上では「月に課金30万円台」とか自慢ツイートしていたらしい。

 そしてその日父に殺害されたのは、この息子が「隣の小学校の運動会がうるさい」と文句を言ったことに端を発するらしい。

 さらに加えて父親の供述によると、この息子は日常的に家庭内暴力を振るっていたとのこと。

 
 なんとまあ、聞けば聞くほどクズである。

 いくら殺されたからと言って、こんな人間をクズと思わない方が難しい。

 当然というか何というか、ネット上ではこの父親に同情する雰囲気が圧倒的に多数派となっている。

 いや、もしかしたら――

 つい先日発生した、子ども狙いの「引きこもり殺人鬼」川崎市51歳のような惨劇が起こるのを、この父親は未然に阻止したことになるのかもしれない。

 そうだとすると、この父親は悲劇の英雄と言っても過言ではないだろう。

 だったら特にネットニュースなんかは、この父親について「共感の嵐」とは言わずとも、「同情の嵐」と報じてもいいのではないか。

 だって普段は毎日のように、芸能人がちょっとなんか言ったら「共感の嵐」「賞賛の嵐」とか判を押したようなタイトル記事を付けているのだから……


 しかし、それはともかくとして――

 つくづく感じざるを得ないのは、現代が「ハズレくじ問題の時代」だということである。

(⇒ 2018年6月13日記事:「小川勝也参院議員の息子また児童猥褻で逮捕」と「新幹線殺人者・小島一朗の父の他人事な態度」-「ハズレくじ」問題という人類・人生最大級の問題)

 
(⇒ 2018年6月27日記事:富山警官殺し拳銃強奪事件:小学校は「社会の捌け口」なのでテーザー銃を/遺伝子操作で防ぐ「はずれクジ」問題)

 

 よく「子は親を選べない」と言うが、その逆の「親も子を選べない」というのもまた真である。

 世の中の親は、それも「よくできた親」であっても、誰もこの「ハズレくじ」問題から逃れられない。

 全国の親の中には確実に、今回殺されたドラ息子とか川崎市51歳のようなクズ人間を、どうしようもなく子に持つ人がいるのである。  

 これはもう、育て方が悪かったとかどうとかいう問題ではないのは、全ての人間がわかっているはずだ。

 世の中にはクズ人間がいる。

 必ずクズ人間が生まれてくる。

 クズ人間は、生まれたときからクズになる素質を内蔵している。

 結局のところ幼女が好きで好きでたまらない人間は、生まれつきそうなのである。

 そうでなくても、そんなスイッチを内蔵して生まれてくる。

 これはもしかしたら、今を生きる日本人にとって最大級の「人生の心配事」ではないだろうか。

 すなわち、わが子だろうとその他の人だろうと、「ハズレくじ」を引くのが日本人最大の、そして最も身近な現実的恐怖になってはいまいか。


 たとえ結婚したくとも、

●その相手は、実は(パートナーを奴隷化するような)サイコ人間かもしれない

●生まれてくる子がロクデナシだったら、引きこもりになったら、いじめっ子にいじめられっ子になったらどうしよう

●付き合いのできる親戚に、ヘンな奴はいないだろうか

 とかいう恐れは、実は地味に非婚化や「子どもを持つ」ことそれ自体に影響を与えているような気がする。

 また、日本人の間で特に強いと言われる「孤独好き」にも、影響を与えている気がする。
 

 たぶんこういう心配事、日頃からネットやテレビで情報を多く仕入れている人ほど深刻になると思われる。

 そして世は「ニュース化社会」である。

 社会の大勢の人が、次から次へとこんなクズ人間のことを情報として聞かされていれば、それはもう恋愛だろうが何だろうが「人と関わる」こと自体を避けるようになるのは自然である。

 先進国になればなるほど出生率は低くなる、特にアジア諸国でその傾向が強くなる、と言われるが――

 それはおそらく経済的要因とか女性の地位の低さとかだけではなく、「クズ人間ニュース」の流れる度合いも影響しているのではないか、と感じるのである。