あのグループソリューションで有名なサイボウズの青野社長が提起した、「夫婦の選択的別姓を認めないのは憲法違反」裁判だが――
3月25日、東京地裁はその損害賠償請求を棄却した。
しかし青野社長らは意気軒昂で、「これは最高裁まで来いというメッセージ」として控訴する気マンマンである。
とはいえ当面、夫婦が強制的にどちらかの姓を選ばなければならない、という時代は続きそうだ。
私もこれについては3年くらい前に記事を書いたことがあるが、意見としては青野社長に賛成である。
なぜなら、夫婦強制同姓制度を取る限り、日本に散在する希少な姓(苗字)は絶滅するとわかりきっているからだ。
これから日本の人口が激減していくことは、誰でも知っている常識である。
それがすなわち「珍しい姓」の激減でもあることは、これまた誰でも予測できる。
たぶん日本の人口が今の半分になる間に、今でも全国に数十~数百人しかいない希少姓の持ち主は、あらかた絶滅してしまうだろう。
出生数自体が減り、夫婦が持つ子どもの数も平均すれば1人か2人。
それでなおかつ「結婚したらどちらかの姓にしなければならない、片方の姓は保持できない」なんてことなら、希少姓の絶滅が加速度を付けるのは当たり前すぎる。
今回の判決が最高裁でも踏襲されるなら、そうなる未来は確定である。
これから日本は、姓の大絶滅時代に入る。いや、すでに入っているのだろう。
もちろん「日本には今、何種類の姓があるか」なんて、公的・定期的に調査されているわけではない。
しかしたぶんそれをやったら、たった20年後でもけっこうな数の希少姓が永遠に失われているはずである。
やがて日本は、中国や朝鮮半島がそうだと言われているように、人口の割には姓の種類が少ない「中国・朝鮮半島」並みの国になる。
日本は世界で一番苗字の数が多い国だそうだが、やがて他の国並みになる。
だがそれも、本当に国民の多くが夫婦強制同姓制度を支持しているのなら、もちろん仕方ないことである。
思えば多様性にせよ伝統にせよ、そんなたいしたものではない。
今まで日本人はチョンマゲやお歯黒などいくつもの伝統を失ったり捨ててきたりしたが、誰も本気でそれを惜しむことはない。
今まで世界中でいくつもの民族・部族及びその「伝統」が滅んできたはずだが、それを心から悲しんでいるのはむしろ変人の類いである。
仮に将来、日本人が絶滅してしまったとしても、世界の人は「そんなもんか」と思う程度だろう。
地球の陸の生態系が人間とネズミだけになったとしても、その時代を生きる人にはそれが当たり前の世界である。
よって、希少姓がほとんど絶滅したからとて、別に誰もたいして思うことはないだろう。
しかし私は、やっぱり希少姓の生態系は守っていった方が良いと思うものである。