プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

社会、ニュース、歴史、その他について日々思うことを書いていきます。【プロレス・格闘技編】はリンクからどうぞ。

切り裂きジャックの正体は理髪師コスミンスキー?-「謎が解決してほしくない」願望


 何度も聞いた覚えがあるが、ついにあの切り裂きジャックの正体が判明したらしい。

 その正体は、事件当時から最有力容疑者の一人だったというポーランド人理髪師アーロン・コスミンスキー(当時23歳)。

jisin.jp

 

rocketnews24.com


 切り裂きジャック事件は1888年(日本で言えば明治21年)というとても憶えやすい年に起こり、

 ジャックは世界で最も有名な犯罪者であり、

 最も「人気のある」未解決事件である。

 それは事実上「世界最初の性的連続殺人鬼」の誕生と見なされている。(だから人気が高いのだ。)


 ところでコスミンスキーという男、最後は精神病院で1919年に死んだという。(享年53歳か54歳)

 もし本当に彼が犯人だったとしたら――

 例によって例によると言うべきか、結局切り裂きジャックもまた「哀れな狂人」だったということになる。

 そしてこれはDNA分析とは全く関係なく、とても納得しやすく、また実態にも沿った結論と言えるだろう。

 我々はドラマや漫画なんかで、この手の連続殺人鬼が「スタイリッシュで、悪魔的な魅力がある」みたいに描かれているのをよく見るが――

 しょせん猟奇殺人なんてリスキーなことをやらずにいられない(ガマンできない)人間が、そんな魅力的であるわけがない。

 ありていに言えば、普通の人間にとってはバカすぎてヘンすぎて、魅力も何もないケースが大半のはずだ。


 今まで切り裂きジャックの犯人としては、

 女王エリザベス一世の孫であるクラレンス公、

 王室侍医ウィリアム・ガル、

 そして外科医たちがラインナップされてきたが、

 そういうのはたぶん「残虐殺人とは縁遠い上流階級・超上流階級の人が犯人だったら面白いよなぁ」という気持ちに支えられているのではなかろうか。

(殺人鬼をスタイリッシュに描きたい、という願望は、今でもずっと続いている。)


 また、もしも今回の研究結果が追認されて定説化することになるとすれば――

 それはそれでイヤだ残念だと感じる人の方が多そうである。

 これは、「ついにネッシーの正体が判明した」場合のことを考えてみればわかる。

 そうなることでつまり世界は、一つの「面白いネタ」を失うことになるからだ。


 そしてそれゆえに、今回の研究結果については、多くの反論・疑問が寄せられることが(誰でも)予想できる。

 こんな100年以上も前の事件を解決するにはDNA分析くらいしか手がないが、

 しかし100年以上も前の試料を基にしてのDNA分析なんて、確かに信頼性が疑われても当然ではある。


 おそらくほとんどの人は――こういう未解決事件のファンでさえ――、切り裂きジャックの謎が解かれるのを本当には望んでいないのだろう。

 そして実際、切り裂きジャックの謎解きはまだまだ続くと思われる。

 人々の願望が、それを続かせずにおかないのである。