アイルランド沖で11月9日早朝、航空機パイロットが「非常に早く動く、とても明るく光る複数の物体」に遭遇したらしい。
これをBBCは「UFO出現か」と伝えている。
もちろん21世紀の今になっても、UFOは男心をそそってやまない不思議現象である。
きっと上記引用記事も、いつもネットでBBCサイトをチェックしているいい歳したビジネスマンが、真っ先にクリックしてしまうのではないだろうか。
(そういう私も真っ先にクリックした。)
ところでこういうUFO記事、今でもちょくちょくメディアに出る。
ネットニュースでも別に珍しくない程度の頻度で出る。
しかしながら、出るのは「UFO遭遇?」記事だけである。
「宇宙人に遭遇?」記事なんて、ここ数年いや10年以上、あなたも見かけたことはないのではないか?
思えば昔は――1960年代から80年代にかけては、「宇宙人に遭遇した・融解された」なんて話が世界中にゴロゴロあったものである。
そしてその宇宙人の姿というのが、例の「グレイタイプ」(現代人が「宇宙人」と聞いて真っ先に思い浮かべるアレ)にほとんど統一されるまでは――
実に呆れるほど多種多様な姿形の宇宙人がいたというのを、あなたも知っているはずである。
(中でも有名なのは、「3メートルの宇宙人」だろうか。)
しかし90年代以降、そういうバラエティ豊かな宇宙人たちとの遭遇話は、めっきり跡を絶ってしまった。
これは、不思議なことである。
そしてまた、結局そういう「多種多様な宇宙人」というのが、実は「廃れた流行」だったのではないか、と大いに疑わせるものでもある。
昔の(多くの)人は、多種多様な宇宙人との無数の遭遇譚というのに、不思議感と神秘感を真面目に掻き立てられたのかもしれない。
しかしいまや現代人は、そういうことをすっかり「バカバカしい、幼稚なもの」と感じるようになってしまった。
いや、もう、「宇宙人に遭遇する」なんてこと自体が笑い話になってしまった。
現代人にとっては、宇宙人より幽霊の方がはるかにリアリティがあるのである。「本当にいそう」と感じるのである。
(たぶん1960~80年代は、宇宙人の方にリアリティを感じていたと思う。)
だが、してみると――
かつての宇宙人遭遇譚というのは、全部が全部ウソか見間違いだったのか。妄想か幻覚だったのか。
本当に、万に一つも本当の話はないのだろうか。
どうも今後、当分の間、大手メディアで宇宙人遭遇譚が記事になることはなさそうである。
UFO記事は載せても宇宙人記事は載せない、という確固たる基準が、メディアの編集部にはありそうである。
メディアの消費者たる我々は、もうそういう話を少しでも真剣に受け取ることを止めた。
そういうのにセンス・オブ・ワンダーを感じることはなくなってしまった。
現代のUFO記事というのは、かつての「ブーム」の残滓である。
しかしそのブームの中に、本物の宇宙人遭遇ケースは一つもなかったのか……
という疑問は、大手メディアが宇宙人話を載せなくなったこれから、世の中で一層衰退していくものと思われる。