韓国の男性アイドル歌手グループ・防弾少年団(BTS)が「原爆Tシャツ」を着ていたというので日本人から反発を喰らったのはつい最近のことだが――
今度は彼らが「ナチス(のSS=悪名高い親衛隊)の徽章付きの帽子」をかぶっていた、
ナチスの鉤十字(逆卍)に酷似した旗を掲げたことがあった、
ということで、ついにあの「世界最強の圧力団体」とも称されるユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」から謝罪を要求された。
これについては、あの高須クリニックの高須院長が、わざわざ同センターのツイッターにBTSの帽子着用写真を送って「何もしないんですか?」ということをやったらしいので、本当にその効果があったのかもしれない。
さて、たまたま防弾少年団というのが世界的な人気グループ(らしい)なので槍玉に挙がったものだと思うが――
たぶん世界中で「ナチスの制服・旗・徽章」そのままかそれを思わせるファッションを身に着けたことのある人たちというのは、莫大な数に及ぶだろう。
なぜならナチスは「カッコいい」からである。
オトナの世界では悪の権化とされているから、それゆえに若者にウケる」からである。
きっとミリタリーファンに真の内心のアンケートを採れば、日本人でさえ旧日本軍よりナチスドイツ軍が好きだと答える人の方が多いだろう。
第二次大戦もので出版すれば売れるのは、まず間違いなく「アメリカ軍軍装図鑑・兵器大観」よりも、「ナチスドイツ軍装図鑑・兵器大観」の方だろう。
(それも大差を付けると思われる。)
まことにヒトラー、ヒムラー、ゲッベルス、ハイドリヒなんてのは、現代の悪のヒーロー(真のダークヒーロー)である。
ナチスドイツとは、スタイリッシュな悪の象徴で悪の理想型である。
内心密かにそう思っている人が多いのを、あなたは否定できるだろうか。
そりゃ「若い男性」である限り、防弾少年団のメンバーがナチスっぽいファッションや旗を着てみたい・使ってみたいと感じるのは、全然不思議なことではない。
tairanaritoshi-2.hatenablog.com
ところでこの「ナチスファッション」について、私が昔から不思議に思っていたことがある。
それは、ずっと以前から今に至るまで何十年も「逆卍」の旗が堂々と掲げられ、逆卍のタトゥー(シール)を入れている人が複数人いる世界が、この日本にはあることだ。
言うまでもなくそれは、プロレス界である。
そう言われればすぐ思い当たる人が、まだまだ日本には何十万人といるはずである。
逆卍を頬に描いたり旗に掲げたり、現代日本であれほど公然とやってのけている人はいない。
しかしながら寡聞にして、それを批判されたことがあるとは聞いたことがない。
もしかしてサイモン・ウィーゼンタール・センターは、ダンプ松本のことを知らないのだろうか。
高須院長も、ダンプ松本のことを通報しようとは思わなかったのだろうか。
(RIZINの会場でアナウンス紹介されるような人が、極悪同盟のことを思いつかないとは思えないのだが……)
なるほどプロレスラーが逆卍のイレズミをしようものなら、WWEはじめ欧米のプロレス団体には決して出場できないだろうことはわかる。
やっぱりそれは、(いくら悪役レスラーでも)絶対のNGのはずである。
しかしそれでも、少なくとも「日本の」プロレス界というのは、ずいぶん国内・国外からお目こぼしをもらっているものだと思う。
そういえば日本で唯一公然と、大勢の群衆の「キ●ガイ」合唱が起きているのも起こしていいのも、大日本プロレスかフリーダムズの会場だけだ。
どうもプロレスは治外法権というか聖域というか、とにもかくにも「なぜか世間から批判されない」世界のようだ。
これにはいったいどんな要因があるのか、
もしかしたら「プロレスなんかを批判したら、自分がプロレスなんかを見ていることがバレる」とでもいうような「恐れ」を持たれているのだろうか……
ただ、日本におけるナチスファッションは、別にプロレス界やミリタリー誌だけの世界にとどまっているわけではない。
周知のとおり宇宙戦艦ヤマトの「デスラー総統」なんてモロにヒトラーのオマージュ(と言っておこう)であるし、
機動戦士ガンダムのジオン軍もまた、モロにナチスドイツ軍を意識している。
(そしてもちろん、連邦軍よりジオン軍の軍服やモビルスーツの方が人気が高いはずだ。)
これもまた誰でも容易に看取・感知できることのはずだが、なぜか今までユダヤ人団体に謝罪を要求されたことはないようである。
こういう例をサイモン・ウィーゼンタール・センターに送って「何もしないんですか?」と問いかけたらどうなるのか、
今までそんなことをした人はいないのか、
ちょっとは興味がないでもない。