プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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大阪の脱走犯、日本一周サイクリストと同行し、山口県の道の駅で万引きで捕まる-犯罪史上の奇観

 9月29日、大阪府の富田林警察署から脱走していた樋田淳也容疑者(30歳)が、万引きにより捕まった。

 盗んだのは餅やロースカツ、菓子パン、缶コーヒーなど約1000円分。

 所持金は280円ぽっちだったという。

 当然のことながら、荷物満載の自転車は盗んだもの。

 また、ついでに言えば、容疑者は子どもの頃かくれんぼが得意だったともいう。

 

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 この万引きの舞台となったソレーネ周南という施設はなかなか大規模なのだが……

「道の駅」というのどかそうな名前の所にも、ちゃんと私服の万引きGメン(警備員)がいるのである。

 当たり前と言えば当たり前だが、世知辛い世の中だ。

 
 この人がいずれ捕まることは誰でもわかっていたはずだが、8月12日の逃走から約1ヶ月半、富田林から西へ360キロ行った山口県周南市という予想外の場所で御用となった。

 「予想外の場所」と言いたいところだが、どうせどこで捕まったって予想外の場所と言われる。

 結局彼にはかくまってくれる知人もいないようなので、生きるためには万引きするしかなく、そんなことしてたらいつかはパクられるに決まっている。

 たぶん逃走犯のほとんどは、こういう結末を迎えるはずだ。


 ところで樋田容疑者、280円しか持ってないのに警備員に呼び止められると「(外の自転車に)財布を取りに行っただけ。逮捕されるのは納得いかない」と話しているという。

 さすが犯罪者らしい太い根性、いけしゃあしゃあとしたデタラメ野郎だと思うところだが――

 しかし刃物を所持してなく(いままで万引きしてなく)、逃げようと暴れはしたものの暴力を振るったように報道されてもいないのは、一片の良心が残っていたということだろうか。

(もしくは、そこまでの度胸は持ってないかだ。

 彼は女性への強制性交で起訴されているが、人の見てないところで強制性交はできても人前で暴力は振るえないというタイプは、結構いそうである。)


 なお、(ちょっと驚くが)樋田容疑者、今まで一人で行動していたのではなく、日本一周旅行中の男性サイクリスト(44歳)と道行きを共にし、運命のソレーネ周南にも一緒に来ていたという。

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 その道中は道の駅に泊まったり野宿したりし、四六時中一緒ではなかったが事前に落ち合う場所を決めて合流していたという。

 二人が出逢ったのは3週間前、愛媛県の道の駅でだったそうだから、きっと有名なしまなみ海道も一緒に自転車で渡ったのだろう。

(またしまなみ海道である。あの「泳いで」本土に渡った平尾龍麿受刑者も、しまなみ海道に沿う向島が捜索の焦点になった。

 まるで「犯罪者ジャンクション」の様相だ……)


 そんなにも密接でありながら、この超有名になった樋田容疑者に気づかないなんてことがあるのか――

 と疑問に感じるのが普通だが、しかしもちろんこれはあり得る。

 樋田容疑者は髪も丸刈りにし(バリカンを買って自分で剃ったのだろう。さすがにカットハウスには行かなそうだ)、ただそれだけでも超有名になった顔写真とは印象が変わる。

 そしてだいたい、まさか自分と一緒にいて話をしている人が超有名逃走犯だなんて、普通は誰も思わないものだ。

 そもそも今まで立ち寄った道の駅でも誰も樋田容疑者に気づかなかったということなのだから、別にこれはおかしなことではない。

(あなただって誰だって、樋田容疑者がいるかもと鵜の目鷹の目で街を歩いていたわけではないだろう。)


 しかしやはり、ちょっと小さな疑問はあるのである。以下、思いついたことを列挙してみる。

①樋田容疑者の(盗んだ)ロードバイク自転車は荷物満載で、しかも本格サイクリストのようにちゃんとした荷造りはしていなかったはず。
 これを不審には思わなかったか。

 これは確かに、怪しいと思ったはずだ。

 だが、だからといって樋田容疑者だと思いつくことに飛躍するわけではないし、警察に通報しようなどとも思わないだろう。

 サイクリストにも色んな人がいて、こんな「普段着」の旅装で旅する人だって皆無ではない。

 そしてまたたとえ不審を抱いたとしても、「まさか超有名逃走犯が日本一周中の自分と行動を共にするなんて、あるわけない」と打ち消すのが普通である。


②樋田容疑者はカネを持っていなかったはずだが、そのことを今まで男性はどう思っていたか。まさか奢ってたのか。

 樋田容疑者の逮捕時の所持金は280円だった。だからソレーネ周南で万引きをしたはずだ。

 しかし280円になったのは、まさにこのソレーネ周南の直前でだったのかもしれない。

 3週間前の愛媛県での道の駅から周南市に至るまで、二人が何の買い物もしなかったはずはないと思う。

 「財布を(クレジットカードと一緒に)落としてしまったんで……」とか言って男性に奢ってもらってた可能性もあるが、ではスマホも落としたと言ってたのだろうか。

 もしかしたら樋田容疑者、最終的にはこの男性からカネを盗んで姿をくらますことにしていたのかもしれない。

 もしそうだったらこの男性、命拾いならぬカネ拾いしたことになる。


③樋田容疑者の逮捕「直前」、この男性はソレーネ周南を自転車で発ったという。
 これは記事では、「店内から戻ってこないことから、いったん現場を離れていた」とある。
 万引き実行時には「外で服を乾かしていた」というが、なかなか戻ってこないなら「いったん店内に様子を見に行った」が普通ではないか?

 これは誰でも疑問に思う点だと思う。

 別記事によると、樋田容疑者は

 ●そのまま店外に出て自転車に乗ろうとし、

 ●私服の女性警備員に「会計がまだですよ」と声を掛けられたが、

 ●「財布を取りに行っただけ」と取り合わず、

 ●別の従業員らと揉み合いになった

 とある。

 44歳男性は、「たまたま」樋田容疑者が店外に出る直前に、自転車で発ったのだろうか。

 それは樋田容疑者が戻ってくるまでの時間つぶしでちょっと道の駅周辺を回ってくるということなのか、それともここでオサラバするつもりだったのか……

 もし前者なら、その前に店内へ行って様子を見てみるというのが自然だし、

 もし後者なら、3週間も道行きを共にした旅仲間に対し、非常に不人情なように思える。

 これはもちろんただの推測だが、44歳男性は、樋田容疑者が警備員らとトラブルになるのを目撃してから自転車に乗ったのではなかろうか。

 それはもちろん、関わり合いになるのが嫌だからである。

 またもしかしたら②で述べたように樋田容疑者にタカられていて、一緒に行動しながらも「もういい加減にしろよ」と思っていたのかもしれない。

 これらの推測が正しければ、それはそれで「普通の人間」の行動であって、怪しいとは言えない。

 そりゃ元々の友人でもないのだから、その男がイザコザを起こしたとなれば、巻き込まれるのが嫌で離れていくのは普通の人間のやることである。


 それにしてもこれだけ有名になった逃走犯が、

 こともあろうに「日本一周中旅行中のサイクリスト」と一緒に行動していたなんて、

 犯罪史でも希有な出来事ではないか。

 そしてもう一つ教訓と言えば――

 指名手配で配る顔写真には、容疑者の「丸刈り写真」及び「マスクを掛けた写真」も添えた方がいいのではないか、ということである。

 なんたって逃走犯にとってはこれが一番、簡単にできる変装なのだから……