プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「最強地銀」スルガ銀行もまた封建土人国-働く人の自己肯定感はますます低下する

 スルガ銀行と言えば、ついこの間まで「最強地銀」「再優良地銀」として経済誌などで賞賛されていた。

 従来の業容自体がオワコン化しているとも言われる銀行の中にあって、一頭地を抜く「エクセレント・カンパニー」だったのだ。

 しかし文書偽造まで横行する不正融資が明るみになった途端、この世の習いとして、一転水に堕ちた犬として叩かれまくる状況となった。

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 そして例によって、冗談かと思うようなパワハラが横行する行内の惨状までも暴露されてしまっている。

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●数字(営業成績)ができないなら、ビルから飛び降りろと言われた

●上司の机の前に起立し、恫喝される。机を殴る、蹴る。持って行った稟議書を破られて投げつけられる

●ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、オマエの家族皆殺しにしてやると言われた

●支店長が激高し、ゴミ箱を蹴り上げ、空のカップを投げつけられた

●死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された

●なぜできないんだ、案件をとれるまで帰ってくるなと言われる。首をつかまれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った


 第三者調査委員会の報告書には、行員のこういう経験談が列挙されているとのことだが……

 いやはや、マフィアの事務所でもこんなことはないだろうというような悲惨の話の数々である。

 これだけ見ると、スルガ銀行というのは狂人の集団と言われても仕方ないだろう。

 経済誌が褒めあげていた頃のスルガ銀行の内情はこんなものだったのだから、当のスルガ銀行行員の心中はいかばかりのものだったろうか。


 しかしこれ、私も確かに怪しいとは思っていたのである。

 「1億円貸して数万~数十万円しか利息が取れない」なんていう(笑っちゃうような)超低収益事業になってしまった地銀業界の中で、なんでスルガ銀行だけがエクセレント・カンパニーでいられるのか……

 他にもいくつかの地銀・信用金庫などが顕彰されているならともかくとして、たった一つだけ際だって優れているというのは、実に怪しい。

 そしてやはり、スルガ銀行は、際だっておかしかったようである。


 それにしても「家賃保証」を信用して多くの投資家が引っかかってしまったと言うが――

 「入居者が入らなくても家賃は保証します。投資家のあなたには家賃収入を必ず払います」なんていうウマい話が、明らかにあるわけはない。

 そんなことは誰だってわかるはずなのだが、やっぱりプロを自任する投資家であろうがなかろうが、引っかかる人は引っかかるのだ。

 これはまた、「投資のプロ」なんていうものが、いかに当てにならないかを示すものである。

(だいたい今回引っかかった人たちは、間違いなく本業の片手間で投資をやっているので、絶対に「プロ」を自認できない。)


 なお、これは私も知らなかったのだが、スルガ銀行というのは創業家の岡野家が代々CEOを務めてきた世襲企業だそうだ。

(そして不正融資発覚後の今も、大株主である。)


 つまるところ、近代的な先進地方銀行というよりは、「地元の金融屋」と言った方がより正確なようである。 

 そしてこの一点だけで、スルガ銀行というのがいかに封建土人国であるか(なりやすい土壌であるか)、納得できるような気がする。

 きっと

 パソコンにパンチし、

 家族を皆殺しにしてやると怒鳴り、

 ゴミ箱を蹴り上げる、

 なんていう凶暴土人にしても、岡野家のCEOなんかに呼びつけられればコメツキバッタのようにヘイコラするか、清純処女のようにしおらしくなってしまうのだろう。

 「弱き者、汝の名は女なり」という言葉があったが――

 「哀れな者、汝の名は封建土人なり」というのが現代ではよく似合っている。

(そして現代の我々にやたらアピールする「サムライ」という人種も、大半がこの手の封建土人だったろうと思われる。)


 本当に我々は、こうした封建土人を日本から絶滅させるべきである。

 「スーツを着た凶暴土人」がのさばるのも、不正融資に加担することを(まともなはずの)行員が断れないのも――

 その根源には、「封建制が正しい/好きだ」と思う日本人の道徳がある。

 そんなことだからろくでもない世襲当主に忠誠を誓うのが正しくなり、

 狂人上司にたてつくことも(哀れなことに、道徳的に)できないのである。

(そしてもちろん、転職なんてまともに考えることもできない。

 「転職が当たり前」の社会を作ることが、いかに封建土人国の絶滅にとって重要なことかわかる。)


 もし日本が封建土人国をやめることができなければ、国際競争にズルズル負けていくのは目に見えた未来である。

 そしてまた、こういうニュースを日々聞くたびに、若い人が「やっぱり働いたら負け」と感じるのもわかりきっている。

 さらに言えば、それでも現実に働いている自分を「卑下せずにいられない」状態になるというのは、よほど想像力のない人でも簡単に想像できるのではなかろうか。