今回の台風21号で、関西地方には特に大きい被害があった。
中でも大阪湾の沖に浮かぶ「島型海上空港」関西国際空港では――
本土と繋がれた唯一の連絡橋がタンカーとの衝突により寸断、
しかも折からの高潮により空港自体が潮で水浸しになり復旧のめどが立たない、
との大被害を受けてしまった。
もちろん、ただでさえ「沈みゆく島」として有名な関空のこと、高潮対策や連絡橋の大地震対策はしていたのだが、それでも今回の事態は「想定外」だったという。
しかしながら、「高潮の影響で排水ポンプが上手く機能しない」なんてのは、日本全国の沿岸部では今まで数限りなく起こってきたことだと思う。
それに今回は「50年に一度の想定を超えた」とか書かれているが、50年に一度は起きるかもと想定されていたとすれば、それは「100年に二度起きる」ということなのだから、けっこう頻繁と言えるのではないだろうか。
素人考えでは、非常用電源・非常用自家発電装置・排水ポンプなどというものは――
「高床式倉庫」みたいな感じで、空港島の表面よりずっと高く設置しておくのが普通だと思うのだが、そういう考えは普通ではないのだろうか。
(もっとも、日本各地で「非常用電源が“低いところ”に設置されている」実例が数多いのは、知っている人は知っていることだが……)
そしてもう一つ。
「連絡橋は大地震にも耐えられるようになっているが、タンカーが衝突するとは想定外」と言うが、
「橋に大型船がぶつかって橋が落ちる/使えなくなる」なんていうのは、
「パニック大破壊映画」を一度でも見ている人間なら(つまり、日本人のほぼ全員)、誰でもほとんど真っ先に思いつくことではなかろうか。
思えば例の9.11同時多発テロの「ワールドトレードセンターにジャンボジェット機が突っ込む」というのも、「そうやったら派手な大破壊になるんじゃないか」とは、世界中で何百万人も考えていただろうことである。
実は私も(後出しジャンケンのようで恐縮だが)、関西国際空港ができたとき、「この連絡橋にタンカーがぶつかったらどうなるだろう」と想像したクチである。
もちろんその時は「そうなっても大丈夫な強度があるんだろう」と勝手に想像していたのだが、どうもそうではなかったようだ。
つい先日の西日本豪雨災害でもそうだったが、これからはきっと「百年に一度の事態」なんてのが頻繁に報道される予感がする。
そこで対応策と言えば、これからのインフラ工事には「パニック大破壊映画大好き人間」を建設最高リーダーにすべきではないか、少なくともスタッフには入れるべきではないか、ということである。
橋にタンカーが衝突するのも、
高潮時という最悪のタイミングで巨大台風が直撃するのも、
そういう「大好き人間」にとって、思いつくのは朝飯前のことだろう。
たぶんこれからは、橋脚の一番下の土台部分(コンクリートで円柱状になっている部分)は、直径を非常に広く取るべきである。
非常用電源と排水ポンプの駆動部は、高床式で地面からかなり高い位置に設置しておくべきである。
(もっとも空港なので、あまり高いと邪魔になるが……)
もちろんコストは高くなるが、「50年に一度」は今回のような事態が起きると思えば、はなはだ安い投資ではあるまいか。