ブラジルはアマゾン奥地、ペルーとの国境付近で、また「文明未接触部族」の(ドローンによる)撮影が成功した。
最近とみに、こういうニュースを多く聞くような気がする。
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ところで誰しも考えるのは――
当の部族に気づかれれば騒がれ、よって低空で接写できないドローンよりも、
あの災害救助用に開発されつつあるヘビ型ロボット、
あるいは(まだ作るのは難しいが)小さな飛行昆虫型ロボットなどを送り込んで木の陰から撮影できれば、
文明未接触部族の生活の一部始終が記録できるのではないか、ということである。
これはその手の研究者ならずとも、テレビ放送されればかなり高い視聴率を見込めそうである。
だがここで、誰もが簡単に思いつくのは――
未開部族の生活を勝手に撮影(盗撮)し、勝手に大勢に公開するのは、倫理に反する人権問題だ――という声が起きるに違いないことではないだろうか。
今の時代、獣医学部ですら、本物の動物の死体を解剖実習するのは残虐行為だと言う人だって多いのである。
だったら動物ではない明らかな人間に対し、研究のためだろうがドキュメンタリー制作のためだろうが、盗撮なんて穢らわしい……
という世論が盛り上がることだって、別に不思議なことではない。
そして、もし人類が宇宙のどこかで「地球人より進歩してない」知的生物を発見したら、やっぱり地球人の中ではそういう声が強くなるのではないか?
ということは、もし地球人よりはるかに進歩した宇宙人が、本当に地球にやってきているものなら――
その宇宙人の属する世論は、地球人への介入はおろか、観察・記録さえも反倫理的で許されないとしているかもしれない。
私にはどうも、
「超絶進歩した宇宙人は地球人を虫ケラぐらいにしか思っていないので、平気で冷酷に地球人を誘拐・実験台にしている」
なんてことよりも、
「地球人を誘拐したいとか、せめて観察したいとか思っている宇宙人は、そんなことは人道に反するという宇宙人世論によって抑圧されている/悪党扱いされている」
ということの方が、まだしもあり得るように思える。
はたして皆さんは、アマゾン奥地やアンダマン諸島の北センチネル島(外部から来た人間は必ず殺されることで有名)の文明未接触部族を小型ロボットで「盗撮」することに賛成だろうか。
それは多くの人が非常に興味を持って見たがるものであるはずだが、人間をドキュメンタリー番組の動物並みに扱っている、と言われればそのとおりかもしれない。
未開部族という「他人」のセックス、出産、争いなどを記録しようと思うこと自体、非常に下劣で許されざる心根である――
と言われたら、この現代では誰も反論できないのではないか。
ここのところ文化人類学者などどう考えているか、意見を聞いてみたいところだ。
そしてこういう問いに、もう今すぐにでも答えなくてはならなくなっている、と思うのだが……