7月初旬の西日本豪雨災害は、まだ記憶に新しい。
しかし長崎県においては、大雨特別警報で約60万人に避難指示及び避難勧告が発令されたが、実際にはそのうち0.14%の836人しか避難しなかったらしい。
この報道記事で注意を引くのは、珍しく新聞が「住民を叱っている」ということである。
記事中では “専門家” の話として「自分の命は自分で守るという意識が欠けている、と警鐘を鳴らしている」とか、
「住民の動きは鈍かった」とか、
東京大学特任教授が「避難者数があまりにも少なすぎる。今はハザードマップや様々な警報などから情報を得やすくなっており、行政だけに頼らず、住民自らの命を守る主体性が求められる」とか、
本当に住民を叱ることしか載せていない。
これには新聞をいいかげん読み慣れた(読み飽きた)人も、意外さを感じるのではないだろうか。
普通ならいつものことながら、
「行政は住民に避難を促す工夫をもっとする必要がある」
なんて文章が来るはずだからだ。
もうさすがに住民のタイコモチばかりするのは気が引けるようになったか、
それとも「指示や勧告が出ても、なお避難しない」なんてことはさすがに弁護できないと見たか――
何にせよ、ワンパターンから脱却するのは良いことである。
しかし一方で思うのだが……
これ、本当に60万人が素直に全員それぞれの避難場所に逃げてきたら、それはそれでオオゴトではなかろうか。
たぶん長崎県に限らず全国的に、避難指示が出て本当に避難してくるのは1%もいないと思う。
ネット上では「指示が出てるのに避難せず死んだ奴がバカ」と書き立てられるのはわかっているが――
しかし、では、そう書いている人がいざ避難指示が出たら本当に避難するかと言えば、その割合はとても50%には行かないのではないかと思う。
やっぱり普通、自分の住んでいる家が(何と言っても「たかが」大雨で)二階まで水に浸かるなんてことは、ほとんど想像もできないことだろう。
また、裏山の崖が崩れてくるなんてことも、あるいはこの家ごと地盤が崩れ落ちるなんてことも、なかなか実感として危機感は持てない。
それにまた、むしろ家を出て避難する最中に土砂崩れに巻き込まれて死ぬ、ということも実際にある。
はたして長崎県は、60万人が避難してきて対応できたか。
日本全国の各地域は、そんなに大勢が避難してくるのに対応できるのか。
(きっと、「メシはないのか、水はないのか」などというクレームや怒号の嵐になると思われる。)
たぶん私の生きているうちに南海トラフ巨大地震も第二次関東大震災も来るのだが、
そして今回のような大豪雨も、また何度も起こりそうな気配だが――
そのときの避難率がどれくらいのものになるか、どんな風に対応するのか、ちょっと気になるところである。