プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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東京医科大学、女子受験者を一律減点-「外科では女3人で男1人分」との現場の声は「神の声」ではないのか?

 つい先日、文科省官僚の息子を不正加点入学させたと報じられた東京医科大学で、またも事件が発覚した。

 2011年度から女子受験者の得点を一律減点し、意図的に女子合格者数を抑えていたというのである。

 その理由として同大学関係者は、「これは必要悪」とコメントしたようだ。


「緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがち」で、

「女3人で男1人分」とも囁かれているらしい。

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 この一律減点というのは、誰がどう考えてもアウトである。

 初めから「男子の合格枠は300人、女子の合格枠は100人」と公表していればまだしもだが、秘密裏にこんなことやってりゃ女子受験者のみならず無関係の他人が憤るのも仕方ない。

 
 しかしながら……

「緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがち」「女3人で男1人分」と言われているというのは、まぎれもなく “現場の声” である。

 そして “現場の声” というのは、ありとあらゆるビジネス本・経営本・超有名経営者の自叙伝はおろか、毎日の新聞・雑誌の記事などで、

 とにかく一番重要な “神の声” にも等しい扱いを受けているはずだ。

 もちろんそこでは、現場の声こそ最も正しく適切である――それを汲み取れるかどうかこそが組織存立の成否を分ける、とされている。

 ということは今回の場合も、やっぱり “現場の声” が正しいんじゃないかと考えるのが筋だろう。

 社会構造がどうとか言ったって、現場にはそんな説教は(たぶん)打てども響かないのだ。


 おそらく医療業界の外科業界では、「女性医師1人でやっと男性医師3人分」というのは、かなり共感を得ていると思われる。

 他ならぬ男性医師たちがそう感じ、それどころかバリバリの女性医師さえそう感じて(舌打ちでもして)いるだろうことは、簡単に想像できそうではないか?

 たぶん今回のニュースに憤る人も、自分が医療業界の外科業界で働いていれば、また違った感じ方をするのだろう。

 人は立場によって、簡単に宗旨替えをするものである。

(人は誰でも既得権益者で、自分の既得権益を守るのは絶対正義とナチュラルに思うものだ。)


 東京医科大学は――ひょっとしたら他の医科大学も――、そういう現場のニーズに応えようとしたとも取れる。

 しかしまさか表立って女子合格者数を制限するわけにはいかないから、「苦肉の策」で秘密裏の一律減点に走ったのだろう。


 さて、 “現場の声” が一番大事だという万人に共通の「常識」を持つ者なら、この問題に何と答えを出すべきだろう。

 一つ思うのは、こういう構造の業界にこそワークシェアリングを適用してはどうか、ということである。

 たとえば外科医師は、男であろうと女であろうと半日勤務とする。

(あるいは一日置きとか、1週間勤務の次は1週間の休みとする。) 


 それをシェアリングすれば、結婚・出産する女性医師でも仕事のやりくりはできそうに思える。

 医科大は合格者数を抑制するどころか、逆に増やさなければならなくなるほどだろう。

 むろんこんなことをすれば、一人一人の医師の給与はガタ減りする――

(逆に言えば、医師を増やしても病院の人件費負担はさほど伸びない。)


 しかしそもそもワークシェアリングって、基本的にはそういうものである。

 もし医師が「難しい試験を通った頭のいい人しかなれないのに、高い給与をもらえないなんておかしい」と思っているとするなら、それは世間の常識的には「甘え」である。

 それは「学歴の高い人は高い給与をもらって当然」などという反発・糾弾必至の考えと、何がどう違うのか説明の必要があるだろう。


 しかしそういえば医師の世界って、「ワークシェアリングをしよう」なんて声が全く聞こえてこない業界の一つである。

 「人員を増やし、勤務をシェアしよう」というのはそんなにヘンな考えではないと思うのだが……

 またそういえば、金融ビッグバンはとっくの昔に起こったのに、医療ビッグバン(外国の医療機関が日本にも進出する)なんてことは全然話題のカケラにも上らないのも不思議である。

 こういう点こそ、医療業界の構造問題ではないかと思うのだが……