神奈川県横浜はじめ病院(2017年12月までは大口病院)の31歳女性看護師が、20人以上を殺害したらしい。
方法は、患者の点滴に消毒液や界面活性剤(洗剤?)を混入したことによるもの。
先日の家族相手の女毒殺魔とは違うタイプの、そしてはるかに危険な女毒殺魔である。
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「看護師が犯人」
「看護師が患者に毒を盛って(入れて)殺す」
「看護師は大量殺人鬼」
と聞けばセンセーショナルでショッキングな話のようだが――
欧米では、女性看護師が大量毒殺魔であることは割とありふれた伝統である。
これはコリン・ウィルソンをはじめとする犯罪本をいくらか読んできた人であれば、とっくにご存じのことだろう。
だから今回の事件も、その一端に連なる同パターンの反復とも言える。
しかしちょっと注目なのは――
欧米の女毒殺魔というのは、とにかく毒殺に憑かれたような「殺しの本能」に突き動かされて犯行を重ねる人が多い(と言うか、そんなのばっか)印象があり、
そもそも人の死が見たいから看護の職に就いたという人が多そうなのだが……
今回の看護師はその動機として、「自分が勤務のときに亡くなると、家族への説明が面倒だった」と言っている点である。
これはもしかしたら、ネットニュースの定番フレーズ「共感の嵐」がよく似合う動機ではなかろうか。
少なくとも、「容疑者の動機に密かな共感」と見出しが付いても不思議ではないように思える。
もちろんそんな見出しを付けるニュースサイトはなさそうだが、それは単に炎上を恐れるからに過ぎないと思う。
きっとこの終末期医療の業界では(あるいはこの病院では)、患者が亡くなったときの状況について「その時の担当の看護師が遺族に説明させられる」ことになっているのだろう。
それはもちろん当然のことかもしれないのだが、たぶん面倒なことでもあるのだろう。
なぜ面倒かと言えば、おそらくは「食ってかかる」「恨み節を言う」「責める」遺族がいるから/多いからなのだろう。
そんなことばかり重なって、ストレスが高じたあげく毒殺に手を染める……
これはけっこう、世の多くの労働者(特にサービス業)の「共感」を呼び起こしそうな心理ではないか?
「クレームの元になる人」をいっそ殺したいと思った人、死ねばいいのにと思った人というのは、日本中にものすごくゴロゴロいそうである。
もしかしたらこういう理由による殺人は、これからの日本の殺人の一主流になってもおかしくはない。
なにせ、これほど多くの一般人に共有されている動機は他にほとんどなさそうだからだ。
そしてそういう殺人が頻発すれば、実際に世に溢れるクレームを減らす効果があるのかもしれない。
犯罪は社会を映す鏡というが、「クレームストレス殺人」というのは、21世紀前半の日本社会に特徴的な殺人形態になるだろうか。